トヨタ、BMWと提携拡大 燃料電池車で次世代狙う 世界的なEVの販売失速 好調なHV背景に「全方位戦略」一気に加速か
zakzak by夕刊フジ / 2024年9月6日 15時29分
トヨタ自動車とドイツのBMWが、水素で走る燃料電池車(FCV)分野で提携を拡大すると発表した。次世代車の本命とみられてきた電気自動車(EV)は世界的に販売が失速し、メーカー各社は方針転換を迫られている。ハイブリッド車(HV)が好調なトヨタは、FCV戦略も一気に加速させる狙いだ。
トヨタとBMWは共同で、小型で高効率な次世代の燃料電池システムの開発を目指す。BMWは同社初となるFCVの量産を2028年に始める。両社は12年6月にFCV分野での協業を発表したが、トヨタからBMWへの部品供給など協力は限定的だった。
二酸化炭素(CO2)を走行中に排出しないFCVだが、普及のネックとなっているのが「価格の高さ」と、燃料となる水素を補充する「水素ステーションの少なさ」だ。両社の乗用車や商用車に燃料電池システムを搭載すれば販売台数が増え、価格競争力の向上が期待できる。水素ステーションなどインフラ整備についても両社は協力する。
BMWが5日に開いた説明会には、トヨタの佐藤恒治社長がビデオメッセージを寄せ「協業は新たな段階に入る。欧州の他のパートナーとも協力し、水素社会への移行を加速する」と述べた。
BMWのオリバー・ツィプセ会長は「自動車の歴史における画期的な出来事だ。多くの人がFCVを求める時代の幕開けとなる」と意義を強調した。
「EVシフト」は世界的な潮流となったが、欧州自動車工業会によると、欧州連合(EU)各国の乗用車販売に占めるEV比率は1割強にとどまっている。BMWの本拠地ドイツはEVへの購入補助金が打ち切られ、落ち込みが鮮明だ。
シェアを拡大したのは低価格が売りの中国メーカーだ。欧米各国は関税などで対抗するが、メーカーはEV戦略の転換を迫られた。
スウェーデンのボルボ・カーは30年までにEV専業になるとの目標を撤回し、HVの販売を続ける。米フォード・モーターもEVへの投資縮小を決めた。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)はEVの販売減速や中国市場の低迷で業績が悪化。ドイツ国内の工場の閉鎖を検討していると明らかにした。
一方、トヨタは「EVシフト」から距離を置き、HVやFCVなど多様な選択肢を残す「全方位戦略」を進めてきた。HVは好調だが、FCV「ミライ」は販売価格が700万円以上と高額で、14年の発売から約10年間の累計販売台数は約2万6000台にとどまっている。基幹部品の共通化によるスケールメリットを生かし、コスト削減を図る。
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