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江崎道朗 国家の流儀 岸田首相はなぜ続投を断念したのか 政権維持に必須なのは高い支持率と選挙の強さ 世論の支持得るために重要な〝3条件〟とは

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月20日 11時0分

岸田首相は次期総裁選への不出馬を表明した=14日午前、首相官邸(夕刊フジ)

総理大臣はわが国の最高権力者だが、だからといって何でもできるわけではない。政権を維持しようと思うならば、最低でも与党自民党、連立与党の公明党、財務省を始めとする霞が関官僚という3つの政治勢力の支持を獲得しないといけない。

この3つの政治勢力の支持を獲得・維持するためには、世論の高い支持と選挙に強いことが必須だ。そして世論を味方につけ、選挙に勝ち続けるためには、①景気と雇用②政治家のスキャンダル対応を含む世論、マスコミ対策③外交・安全保障、特に日米関係を良好に保つことが重要だ。

岸田文雄首相は14日、次期自民党総裁選への不出馬を表明した。低迷する世論の支持率と衆議院補選での苦戦などから、自民党の多数派の支持を失ってしまったからだ。

それはなぜか。①の景気と雇用については、岸田首相本人も記者会見で述べたように、《30年続いたデフレ経済に終止符を打つための賃上げや投資の促進、電力需要の大幅な増加などに対応するためのエネルギー政策の転換》などに取り組み、一定の成果を上げた。

しかし、多少の賃上げが進んだところで税金と社会保険料の上昇で可処分所得はそれほど増えていない。しかも円安に伴う原材料費の高騰に対して一時的な補助金や1年限りの定額減税を実施したものの、「消費税減税」や「関税の引き下げ」といった、誰もが分かる対策を講じなかった。

②の世論、マスコミ対策についても、うまくいかなかった。

岸田首相本人も言及しているように、《国民の共感を得られる政治を実現すること》に失敗した。岸田政権が何を目指しているのか、本来ならば与党の政治家たちが首相のもとで一致団結し、国民に向かって熱心に説明すべきだったが、実際は党内の不協和音が目立った。

それは、官邸主導政治を機能させるチームづくりに失敗したからだ。そうした痛苦な思いから岸田首相も《新総裁のもとで一致団結、政策力・実行力に基づいた真のドリームチームを作ってもらいたい》と述べているわけだ。

③の外交・安全保障については、これも岸田首相が述べた通り、《防衛力の抜本強化、それに、強固な日米関係を基礎にしたG7(先進7カ国)広島サミットの開催や、分断が進む国際社会で協調に向けた国際的な議論をリードし、外交を多角的に展開することなど、大きな成果をあげることができた》と言えよう。

特に、安倍晋三政権でも成し遂げることができなかった「防衛費倍増」と「敵反撃能力の保持」は画期的だ。だが、こうした成果も国民に正確に伝わっているとは言い難い。与党の政治家たちが積極的にその成果を宣伝しようとはしなかったし、マスコミもあまり報じようとしなかったからだ。

いくら首相として奮闘しようとも、与党を動かし、国民の支持を獲得するチームをつくれなければ、政権は長続きしないのだ。

■江崎道朗(えざき・みちお) 麗澤大学客員教授・情報史学研究家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎道朗塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、23年にはフジサンケイグループの「正論大賞」を受賞した。著書・共著に『シギント―最強のインテリジェンス』(ワニブックス)、『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作』(扶桑社新書)、『日本の軍事的欠点を敢えて示そう』(かや書房)など多数。

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