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日本の解き方 利下げを始めた欧州中央銀行 FRBと同様に雇用確保重視、日銀の利上げ方向と対照的だ

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月13日 11時0分

欧州中央銀行(ECB)は6日、利下げの開始を決めた。米連邦準備制度理事会(FRB)も利下げの時期が注目されており、日銀の政策の方向性との違いが目立つ。

ECBのインフレ目標は、EU基準消費者物価指数(対前年同月比)でみて2%だ。政策金利を0・25%から0・75%へと金融引き締めを開始した2022年7月のインフレ率は8・9%だった。

その後、政策金利を小刻みに引き上げ、23年9月に4・75%になった。他方インフレ率は22年10月に10・6%まで上昇したが、すぐにピークアウトし、24年5月に2・6%にまで低下した。この動きは、まさに金融引き締めは遅れて行う「ビハインド・ザ・カーブ」だ。

ただし、正直いえば、インフレ率が二桁になるまで放置せずに、6%程度まで急騰した22年初めの頃に金融引き締めを開始すべきだった。

なお、FRBのインフレ目標は、コア個人消費支出価格指数(対前年同月比)でみて2%だ。政策金利を0・25%から0・5%へと金融引き締めを開始した22年3月のインフレ率は5・4%だった。その後、政策金利を小刻みに引き上げて23年7月に5・5%になった。

インフレ率は22年9月に5・5%となったがその後、低下に転じて24年4月は2・8%だった。FRBの政策対応もビハインド・ザ・カーブの典型であり、タイミングも問題ない。

ECBは、今後インフレ率が上がるとみているか、それとも下がるとみているか。上がるとしても失業率の低下の余地はほとんどない。というのは、今年4月の失業率は過去最低水準となっている。一方、下がるとすれば、失業率が高くなる可能性がある。となれば、雇用確保の観点から、利下げするのは中央銀行の責務として合理的であり、当然だろう。

中央銀行には2つのタイプがある。1つは雇用の確保を重視する立場で、もう1つは金融機関の経営を重視する立場だ。前者は利上げに慎重で、後者は利上げに前のめりだ。

ECBは前者であることが今回明らかになった。FRBも利下げ方針を公表しているくらいなので前者だ。

一方、日銀は典型的な後者だ。インフレ率は当分の間目標2%から大きく逸脱する環境ではないので、直ちに利上げすべきではない。

しかし、「円安悪者論」もあって、日銀の利上げへの前のめり感はなくならない。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、「円安は日本に有利で好機なのに何を騒いでいるのか」と冷ややかだ。これは政府とマスコミの滑稽な対応を揶揄(やゆ)したものだが、国内メディアはまともに言及できない。

最近は、新手の罠(わな)もある。筆者が円安によって外国為替資金特別会計の含み益があることを「外為埋蔵金」と言ったら、日銀が保有する上場投資信託(ETF)の含み益を「日銀埋蔵金」として、売却を示唆する向きもある。ただし、これは金融引き締めであり、利上げになるので要注意だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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