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ドクター和のニッポン臨終図巻 料理評論家・服部幸應さん 仕事をしながら…生涯現役の死 「生きることは、食べること」日本の食料自給率に訴え続けた危機感

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月14日 15時30分

服部幸應(夕刊フジ)

数年前、俳優の梅沢富美男さんと食事をご一緒したときのこと。「僕はね、死ぬときは、舞台の上で死にたいんです」と真剣なまなざしで仰っていたことを時々思い出します(腹上死だけは嫌だなあとも言っていたような…)。畳の上で死にたいと願う人がいる一方で、仕事の最中に死ねたら本望と考える人も多くいます。しかしそれが叶(かな)う人は、ごくわずかでしょう。

服部栄養専門学校の校長で、料理評論家として長年ご活躍されていた服部幸應さんが10月4日に亡くなりになりました。享年78。

服部さんはこの日、東京・千駄ケ谷にある同校で突然気を失って倒れ救急搬送。そのまま病院で帰らぬ人となりました。死因は急性心不全とのことです。

心不全になる人が年々増加しています。罹患(りかん)者数は全国120万、2030年には130万人に達すると推計されています。心不全は大きく慢性心不全と急性心不全に分けられます。何らかの心臓の疾患により、心臓に負担がかかり続け、動悸や息切れなど日常生活に支障が出ている状態が慢性心不全なのに対し、急性心不全はその前兆がなく、ごく短時間で急激に悪化するため治療は一刻を争います。

急に息が切れる、胸部が痛い、呼吸をするときに変な音がする、血圧の低下などの症状を自覚したら、迷わずに救急車を呼びましょう。しかしコロナ禍以降、急増する患者に医療が追い付いていないのが実態です。助かるはずの命が助からない「心不全パンデミック」という言葉さえあります。

一命を取りとめたとしても、重症化した心不全の予後は大変悪く、高齢者の場合は入退院を繰り返しながら終末期を迎えるケースがほとんどです。

服部さんの突然の死に驚き、悲しんだ人は多いでしょう。しかし大好きな仕事をしながらの、生涯現役での死です。しかも長年料理人を育ててきた自分の城で意識を失ったのですから、見方を変えれば、とても幸福な最期とも言えるのではないでしょうか?

服部さんは日頃から学校教育は「知育」「徳育」「体育」の3つに、「食育」を加えるべきだと主張されてきました。日本の穀物自給率の低さにも言及されていました。

「米の備蓄が1年半分しかありません。経済封鎖にあったら、4200万人しか助からない」と。

それなのに日本人はあまりにも危機感がない。今年のコメ不足問題にきっと大きな怒りを感じていたはずです。愛国心というと、軍備のことばかりに話題が行きがちですが、わが国の食と国民の健康に関心を持つことこそが、真の愛国者なのではないでしょうか。

生きることは、食べること。

服部さんが訴え続けてきたことを継承していかねばなりません。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

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