ニュース裏表 伊藤達美 世論の「興奮状態」鎮めるには「出直し解散」しかない 自民党は身勝手な首相批判より…出処進退を国民に委ねる覚悟を
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月21日 11時0分
政治資金規正法改正を巡り、自民党内には「妥協し過ぎ」と岸田文雄首相を批判する声があるが、おかしいと思う。
「妥協」しなければ法案は成立しない。成立しなければ解散・総選挙は不可避となる。それを承知で批判するのであれば筋が通っている。しかし、自民党の大多数は「総選挙は避けたい」というのが本音だろう。だとすれば、妥協するしか手立てがない。
「自民党の主張を実現するため」という意味において、むしろ、岸田首相は四面楚歌(そか)の中で、良くやっているというべきではないか。「解散は嫌だが、妥協はするな」というのは身勝手というものだ。
おそらく今回の改正案は、自民党にとっては「相当思い切った」内容なのだろう。「妥協し過ぎ」との批判は、その裏返しといえる。
しかし、国民が求めているのは「政治とカネ」にまつわる事件の根絶であり、抜本改革だ。今回のような実務的な改革案では、到底、納得できないのではないか。
この問題について、世論は「興奮状態」にあると言って過言ではない。「政治には一定のカネがかかる」といった議論すら受け入れられない状況だ。立憲民主党などが、自ら率先垂範する気がないにもかかわらず、政治資金パーティー禁止を打ち出したのも、こうした状況を意識してのことだろう。
まして、「政治資金制度は、その国の民主主義を形作る重要な要素で、抜本改革のためには選挙制度や統治機構、政党政治のあり方などを見据えた広範な議論が必要」といった「あるべき」論が通じる段階ではない。
筆者は、当欄で繰り返し「出直し解散」を提唱してきた。まずは解散・総選挙を行って、国民の審判を受けた議員によって国会を再構成しない限り、どんな改革案を作っても説得力がないと考えるからだ。しかし、岸田首相は解散を先送りし、再発防止策の策定を優先した。
ところが、派閥を解散させても、39人もの議員に処分を下しても、国民の反応は散々だ。やればやるほど失望感を招いていると言っていい。岸田首相としては「清水の舞台から飛び降りる」ほどの決断だったかもしれないが、国民には全く響かなかった。
「政局運営」の手順を間違えているからだ。
解散を先延ばしすればするほど、世論の興奮状態はさらに高じていくだろう。すでに、岸田首相一人に責任を負わせたところで、事態を解決できないところまできたのではないか。
自民党は事態を深刻にとらえるべきだ。世論の興奮を鎮めるためには、解散・総選挙しかない。岸田首相を「妥協し過ぎ」と批判している場合ではない。それよりも、出処進退を国民の審判に委ねる覚悟を固めるべきだ。「出直し解散」は早ければ早いほど良い。 (政治評論家・伊藤達美)
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