花田紀凱 天下の暴論プラス 29年連載、夕刊フジの思い出 長く続いたひとつの理由、何を書いてもいいという編集部の寛容さにあったのは間違いない
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月16日 15時30分
この「夕刊フジ」が、56年の歴史に終止符を打ち、1月末で休刊と決まったので、このコラムもあと3回。
「夕刊フジ」の思い出を綴(つづ)りたい。
連載が始まったのは1996年2月だから、週1回、およそ29年間、それにしてもわれながらよく続いたものだ。
読者の皆様、歴代担当者には感謝の言葉しかない。
左に掲げた写真は、連載が始まるにあたって、夕刊フジが掲載してくれた筆者紹介の記事(2月1日)で、当時、文藝春秋から朝日新聞社に移籍、あたらしい雑誌『UNO!』の創刊準備に明け暮れていた頃。
若い! まだ髪の毛も健在だ。
<時には時事ニュースを、また時には好きな映画を、バッサバッサと斬りまくる痛快コラム――〝タカ派スキャンダリズム〟復活なるか、お楽しみに。>(第1回前日、5日の告知)
長く続いたひとつの理由は、この紹介にもあるように、何を書いてもいいという、夕刊フジ編集部の寛容さにあったのは間違いない。
29年間、このテーマは困る、この主張は編集方針に合わないなどと、編集部から言われたことは唯の一度もなかった。
最初の頃は夕刊フジから、専用の原稿用紙をいただいて、それに書いてファクスで送っていた。
16字詰めだったか、ザラ紙だが、マス目の大きい原稿用紙で、書き易かった。
10数年前、ある日、担当の中本裕己さん(後に編集長になり、今も、記者として現役で活躍中)から電話があった。
「ハナダさん、実は、わが社でも今後、原稿用紙は作らなくなったんです」
紙からネットへ、時代は大きく変わりつつあったのだ。
しばらくして、また中本さんから電話があった。
「ハナダさん、探したら、大阪の編集部に少し残っていたので、送ります。これが、本当に最後ですよ」
やさしい人なのである。
毎週、ファクスで送っていたと書いたが、こんなこともあった。
当時、ぼくは石原萠記さんが主宰する「愛華訪中団」に加わって、毎年、10日ほど、中国各地で視察の旅を続けていた。
3・11の後、事実は違うのだが、「東電接待旅行」と書かれていた、あれだ。
朝日、中日OBや各出版社の編集者、電力会社の幹部たちも加わった、楽しい旅だったが、それはまた別の話。
10日ほどの旅だから、必ず1度は夕刊フジの締め切りが回ってくる。
訪問先との会食などを了え、ホテルに戻ってから「夕刊フジ」の原稿を書く。
たいていは元講談社の元木昌彦さんと同室だったが、酒飲みの元木さんは酔っ払って隣のベッドで寝ていた。
何回目の時か、西安に行った。
さほど、大きなホテルではなかったが、設備は整っている。ちゃんとファクスもあるということは確認しておいた。
で、深夜、原稿が出来上がったのでフロントに持って行って、東京にファクスを送ってほしいと頼んだ。
ひとりフロントに残っていた青年がカタコトの日本語でこう言った。
「外国にファクスを送ったことがないので、どうやればいいのかわかりません」
これには仰天した。見ると当然だが、ファクスの標示も全部中国語ではないか。
2人で、四苦八苦して、やっと送れたときには、夜も白々と明けかかっていた。
もう失念してしまったが、多分、ゲラは見られなかったと思う。 =以下次号
(月刊『Hanada』編集長・花田紀凱)
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