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久住昌之 するりベント酒 豪華弁当に敗北した帰りの新幹線 売店は行列で酒が買えず…友にもらったビール1缶ではご馳走を持て余すことに

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月6日 10時0分

山口県山口市で行われたイベントに「孤独のグルメ」の音楽制作バンド・スクリーントーンズで参加演奏してきた。

前夜に山口に来て、ライヴは翌日昼。終わって当日帰京。楽屋に出た弁当を、帰りの新幹線でベント酒することにした。

しかし、余裕ぶっこいていて、気がつきゃ新幹線ギリギリ。自販機でミネラルウォーターを買って飛び乗る。本当は山口の地酒でも買いたかったが、売店には行列で、買ってたら間に合わないので断念。

東京までビールの一本も無しか、と寂しい思いでいたら、別の車両に乗っていたバンドのメンバーが、「これ、飲みますか?」と観客にもらったという缶ビールを一本持ってきてくれた。わお。感動。持つべきものは友である。しかも冷えてる。つまみは弁当があるし、これでもう鬼に金棒。

もったいぶらず、さっそくプシュッと開ける。グビグビっと飲む。あー、最高。

さて弁当を開けた。

わお。わおわお。ワオキツネザルになりそうな、この豪華さ。これは高そうだぞ。

正方形の弁当箱が9マスに分けられ、それぞれに御馳走が詰まっている。料理数多し!

ひと目見て「御馳走」と口走ったのは、中央にローストビーフ、その下に鰻の蒲焼きが見えたからである。錦糸卵も華やかさを際立たせている。

エビチリ的なもののオレンジ色もいい。牛肉的なものも目に入ってくる。煮物、鶏唐揚げ、酢の物…。

これをちまちまつついていたら、名古屋ぐらいまでは楽しめそうだ。そしてちょいと寝りゃもう東京だ。これはいいぞ。

さてどこから手をつけるか。俺は俺から見て前列手前の鰻一切れからいったね。

ご飯抜きに鰻のみ一切れ食べる。お、蒲焼きだ。でもなかなか硬い。ふわっとは全然してない。でもいい。おいしい。気分が鰻。心が鰻。上機嫌。幸先がいいぞ。

次は何を食べよう。牛か。牛丼の上みたいな肉。紅生姜が入ってる。下にごはんは無い。肉のみ。食べる。柔らかい。うーん、これはぎゅうだ。甘め。それもいい。グリーンピースは隣の枡から転がり込んだものだろう。鰻のコマにも侵入してる。それもまた面白い。

エビチリ食べた。これは微妙。揚げたエビを甘辛いチリソースで包んでいる。衣が厚く、エビ感は少ない。ソースを食べている感じ。マズくはない。

ローストビーフ。これはさすがに貫禄、この弁当の絶対王者にして見張り役だ。肉は硬めだったが、肉的充実感抜群。

ここで煮物。がんも。やさしい味。いいなぁ。にんじん。お、さと芋の裏に、ブリ焼きが隠れていた!お宝じゃないか。

と、この辺でビールが終わってしまった。なんだ。残念。で、いったん蓋を閉めた。あとは少ししたら食べよう。車内販売無いのが残酷。

と思ったのだが、蓋を閉めたら眠くなって、少し寝た。寝て起きたら名古屋ぐらいだったのだが、なぜかもう弁当の残りを食べる気が全然しない。まだ途中なのに。疲れもあった。でも酒さえあればな。

結局そのままウトウトしたり起きたりしながら東京駅まで。弁当は半分ぐらい残して、ホームで破棄。もったいない。これは、敗北だ。御馳走が、今日の駅弁としては過剰に御馳走すぎて持て余した。

(マンガ家、ミュージシャン)

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