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山下裕貴 有事警戒・台湾訪問 台湾の人々が切望する有事への日本の関与 中国の侵攻作戦、内部から統治システムが崩壊する危険性 「台湾関係法」が必要

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月4日 10時0分

飛行機から見た台北市の街並み(山下氏撮影)(夕刊フジ)

中国福建省に近い台湾の離島、金門島への訪問を終えて、首都・台北市の松山空港に戻ってきた。空港に着陸する前、「軍民共用空港であり、写真撮影は禁止されています」と機内アナウンスが流れた。日本からのフライトでも着陸前にも聞かされたが、最前線の金門島からの帰路だと同じ内容でも受ける印象が違った。

窓から改めて台北市内を俯瞰(ふかん=見下ろす)した。狭い地域に建物が密集し、その市街を分断するかのように淡水河(たんすいが=台湾北部を流れる川)が支流を含めて流れていた。

長年、防衛に従事してきた筆者から見ると、首都防衛のために大規模な市街戦を行うことは正直なところためらう。大小の建造物や河川は障害として利用価値はあるが、問題は約270万人の市民である。台北市周辺には、人口約400万人の新北市や、約37万人の基隆市がある。この台北都市圏約700万人の住民避難は大問題である。

同地域は、海岸からすぐに工場や住宅地域が連なり平野面積が狭く、さらに後背地は丘陵から始まり、3000メートル級の中央山脈へと連接されている。どこに避難場所があるのか。沖縄戦のような住民混在下での作戦は避けなければならない。

今年5月、頼清徳総統の就任演説に反発した中国が、台湾海峡で3日間にわたり軍事演習を行った。その間、天然ガス輸送船が高雄市の永安LNG基地に入港できなかった。演習前には毎日1隻が入港していた。台湾の天然ガス備蓄日数は7日程度だとのことである。

米国の戦争研究所(ISW)の最新リポートによれば、中国の侵攻作戦の第1段階が「台湾周辺の海空路の遮断と電子戦」だとしている。この段階でエネルギー危機などが発生し、産業や市民生活への影響が深刻となる。そうなると、デモやテロ、暗殺や反政府勢力の武装蜂起など、まさに台湾内部から統治システムが崩壊する危険性をはらんでいる。

立法委員(国会議員に相当)の王定宇氏から「両岸で戦争が始まれば、南西海域で台湾軍が誤って自衛隊を攻撃する可能性がある。日本と台湾の間に国交はないが、漁業協定のような取り決めが必要ではないか」と問われた。私は「日本版の台湾関係法が必要である」と答えた。

今回の訪問では、さまざまな場所で意見交換を行ったが、改めて感じたことがある。それは「台湾有事」において、日本が積極的に関与することを台湾の人々が切に願っているということである。

日本政府、政治家の覚悟が問われている。 =おわり

■山下裕貴(やました・ひろたか) 1956年、宮崎県生まれ。79年、陸上自衛隊入隊。自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任。特殊作戦群の創設にも関わる。2015年、陸将で退官。現在、千葉科学大学客員教授。新聞やテレビ、インターネット番組などで安全保障について解説している。著書に『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』(写真、講談社+α新書)、『オペレーション雷撃』(文藝春秋)。

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