“主役不在”の大人の飲み会「何のためやろ?」 日本一も祝杯なし…親を楽させる信念
Full-Count / 2024年5月21日 7時5分
■2023年全日本学童優勝…新家スターズは「指導も話し合いもグラウンドで完結」
昨年、“小学生の甲子園”「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」を初めて制し、今夏は連覇を期す大阪・泉南市の学童野球チーム・新家スターズは、「保護者の負担なし」「お茶当番なし」をチーム方針に掲げている。千代松剛史監督は、保護者のストレスをできる限り減らすと共に、“親の手から離す”ことで子どもたちの心の成長も促している。そのような方針に至った経緯を聞いた。
新家スターズの5・6年生は、平日は火・水・木曜の3日間、夕方7時から3時間ほど、市内の専用グラウンドを使って練習を行っている。千代松監督と事務局兼任の吉野谷幸太コーチを中心に指導を行い、保護者コーチやOBが、仕事の都合がつく日にサポートに来る。お茶当番など、保護者の負担になる係は設けておらず、見学する母親たちの姿もない。準備も後片付けも、全て選手たちの役割だ。
「子どもたちへの指導も、指導陣の話し合いも、全てグラウンドの中で終わらせる」が千代松監督のモットーだ。よって、少年野球でよくある「懇親会」「反省会」と言う名の大人たちの飲み会もない。きっかけは、自身の長男がチームに入って野球を始めた時に、「なんで野球って親がこんなに大変なのか」と実感したことだという。
「祝勝会します、忘年会します、っていうんで行くでしょう。すると、大人が楽しんでいるだけで『何のために集まったんやろう?』『なぜ俺はここにいるんやろう?』と思うことが多かったんです。だから、僕が監督になってからは、会を開くのならば子どもたちのためにやってほしい。終わったら家に帰って、ゆっくり親子の時間をとってほしいと言っています」
会合をやるにしても、主役はあくまで選手たち。だから、お酒も基本的にはなしだ。昨年日本一になった時も、世の大人がイメージするような“祝勝会”はしていない。「選手たちを焼き肉屋に集めて、好きなだけ食べさせてあげただけです」と言う。
新家スターズの平日練習の様子【写真:高橋幸司】
■「親から離れた環境で野球をやることが、子どもたちの心の成長につながる」
普段の練習でも保護者は送り迎えだけで、基本的に付き添うことはない。こうしたチーム方針は、入団前にきちんと説明をする。日々子育てに奔走している母親の負担を減らすだけでなく、「少し“昭和的”かもしれないですけど」という監督の信念がある。
「ちょっと親から離れた環境で野球をやることが、子どもたちの心の成長につながるんじゃないかと思うんです。全国大会に行っても、宿舎の部屋のことは全部子どもたちにやらせています。多少、やんちゃなことがあっても、よほど悪いことでなければグチグチ言うこともありません(笑)。6年生が5年生の面倒を見てあげて、その5年生が上の学年になった時に下の子を見てあげる。そういうことも成長につながると思うんです」
10年ほど前に土地を切り開き、自前のグラウンドができたことはもちろん大きい。練習量を積める環境ができただけでなく、用具やマシンの持ち運びなどの面倒な部分が減ったからだ。グラウンド横に冷蔵庫を置くことで、飲み物や弁当を選手たち自身で管理できるようにもなった。
普段は子どもたちを預けている分、試合になると父親以上に“熱くなる”のはお母さんたちだそうだ。少し手を離れている間に息子や娘がどれだけ成長しているのか、新しい発見もきっとあるだろう。「お金は安く、親は楽に。これはずっと貫き通しています」と千代松監督。その相乗効果は、野球の強さにおいても着実に成果として表れてきている。(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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