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“追試”連続に葛藤「ラストチャンス」 育成5年の23歳左腕…オリにまた現れた救世主

Full-Count / 2024年6月10日 8時20分

初勝利を挙げたオリックス・ 佐藤一磨【写真:小林靖】

■オリックス・佐藤一磨「マウンドに上がった時は冷静になれていた」

■オリックス 4ー1 巨人(9日・東京ドーム)

 苦労を重ねた“新顔”が、デビュー戦で大仕事をやってのけた。オリックスの佐藤一磨投手が9日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初登板プロ初先発。5回1安打無失点の好投で、プロ初勝利を掴んだ。バクバクの胸中を押さえながら73球を投げ切った。

 苦悩を乗り越えて大舞台で羽ばたいた。「しっかり腕を振って、自分の球を投げられたかなと思います。試合前の緊張に比べたら、マウンドに上がった時は冷静になれていた。楽しかったです」。キラキラとした目で、遠くを真っすぐ見つめた。

 佐藤は2019年の育成ドラフト1位でオリックスに入団。今季が5年目の23歳左腕は、前日8日に支配下選手登録されたばかりだった。背番号も「001」から「93」に変更。念願の2桁番号を勝ち取り、デビュー戦を迎えていた。

「ずっとファームで(状態が)良かったので。そこは変えずに『1軍だから』どうということは気にせず。ずっと今まで通りのルーティンで、自分に言い聞かせていました。(ベンチで)宗さんがずっと隣にいてくださって『いいぞ、いいぞ』と声をかけてもらったので、本当に感謝です」

 初回1死から2番・ヘルナンデスに左中間二塁打を浴びるも、その後は5回まで巨人打線にヒットを許さなかった。5回を投げ終えると3塁側ベンチで厚澤投手コーチとガッチリ握手を交わした。「よく頑張った。あとは応援していてくれ」と伝えられた。救援陣の奮闘を見守ると、ゲームセットの瞬間に笑顔が弾けた。オリックスでの育成ドラフト出身選手の初登板初勝利は史上初だった。

 満員の日曜日、憧れの東京ドーム、相手投手は巨人・菅野……。普段なら羨望の眼差しを送る条件だが、この日は自分のマウンドさばきにだけ集中した。初体験の大歓声は「ベンチで聞いているよりも聞こえないというか……。もちろん、集中しているので。マウンドにいる方が小さく聞こえる感じでした」と“ゾーン”に入り込んでいた。

 190センチの長身から繰り出す直球に、大きく曲がるカーブ、揺れるフォークなどを織り交ぜるスタイルで躍動。昨季はファームで19試合に登板して8勝3敗、防御率3.94。ウエスタン・リーグ最多勝のタイトルを獲得し「(2軍の)最多勝を獲れたということと、次の年(今年)もファームで抑えられた(4勝2敗、防御率1.99)のは自信になった」と充実の色をにじませた。

■「どうすればいいのか、わからなくなった時もあります」

 チームは今季初の5連勝で借金を「4」にまで減らした。8日には19歳の齋藤響介投手もプロ初勝利を挙げており、2日続けて“新星”が輝いた。「支配下(選手)になったからにはというか……。オリックスにいるからには1勝でもチームに貢献できるように。まだまだ練習しないといけないことがたくさんある。そこは育成の時と変わらずに1勝でも多く目指して頑張りたい」。歓喜の中でも慢心はない。

 投球を見守った中嶋聡監督は「よく投げました。それ以外にないですね」と太鼓判を押した。「今日(監督談話)はちょっとでいいよ。一磨にいっぱい聞いてあげて」。23歳の躍動をたたえる言葉だった。

 試合前練習からベンチに引き上げる際、自然とスタンドから拍手が送られた。大舞台の直前で、緊張しているにもかかわらず、声を掛けてくれるファン1人1人に頭を下げるシーンが印象的だった。大阪・舞洲でサインを求められても「僕で良いんですか……?」と謙遜する姿を何度も見てきた。

 育成契約5年目の今季、自身に「ラストチャンス」と言い聞かせた。投球成績が良い試合でも課題がたくさん残り“追試”の連続。2軍で打ち込まれた日は、何度も投げ出しそうになった。投球フォームが固まらず「どうすればいいのか、わからなくなった時もあります」。正直に本心を打ち明けるのが佐藤らしい。

 野球人生をかけた「最大の勝負」の地は、小学1年生で初めて観戦に訪れた東京ドーム。かつて、スタンドで横並びに座った両親から“独り立ち”して、マウンドに上がった。この1勝は1人で叶えた夢じゃない。およそ10年の時を経た“親離れ”は最高の親孝行になった。

「僕は野球エリートの人生じゃないから、10倍も20倍も練習しないといけないと思っています。せっかく、プロの世界に入れてもらったんですから。今できること、やるべきことは何なのか、突き詰めていきたいなと」

 苦節5年。最短距離で叶う夢なら、苦労はない。蛇行して、遠回りしてでも進んだ自分の道だから、今がある。曲がりくねった足跡、汗と涙の染み付いた「001」のユニホームは、これ以上にない宝物。思い出を胸にしまい込み、新たな野望を抱く。(真柴健 / Ken Mashiba)

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