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「滑り込み」「駆け抜け」はどちらが速い? 強豪校実践…“イチロー流”走塁の検証結果

Full-Count / 2024年6月27日 7時50分

2021年夏の和歌山大会を制した智弁和歌山【写真:荒川祐史】

■智弁和歌山が駆け抜け成功…仙台大・森本吉謙監督はフットスライディング推奨

 次塁には駆け抜けた方が速いか、スライディングの方が速いか。走塁時にどちらを選択すればいいか、迷う場面は多いだろう。そんな永遠のテーマを論文にした大学の監督がいる。仙台大の森本吉謙(よしかた)監督は、筑波大大学院で体育科学の博士号を取得。仙台大では野球部監督のほかに副学長、大学院研究科長、体育学部教授の肩書を持ち、スポーツの様々な事象について研究を行っている。

「現場で起こっていることを客観的に洗い出して、確認するということです。何となくこうじゃないかなと予測でやらずに、多分これってこうだよね、というのが現場の感覚にある中で、それを検証していくことをやっています」

 森本監督は、2023年に「大学野球選手の一塁から二塁ベースへのフットスライディング走と駆け抜け走の時間比較」という共同論文を発表した。研究のきっかけは、2020年にイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が智弁和歌山を指導した際に伝授した走塁にある。智弁和歌山は実際にその走塁を、甲子園がかかる大事な場面で披露した。

 2021年夏の和歌山大会決勝、8回2死一、二塁の場面で智弁和歌山の打者が遊ゴロを放った。一塁走者は二塁封殺を防ぐため、フットスライディングではなく駆け抜けてセーフとなり、そのままオーバーラン。その後、二、三塁間で挟まれアウトになったが、二塁走者の生還が認められて貴重な追加点となり、4-1で逃げ切った。ショートが深い位置から二塁へ放る際、スライディングでスピードが落ちるならば、駆け抜けた方が速いというイチロー氏の持論を実践、成功させたとして、全国でも話題を呼んだ。

 そこで森本監督らは実際に、ある大学硬式野球部に所属する11人を対象に、一塁走者時の第二リード完了地点から二塁までの22メートルの距離(塁間は27.431メートル)を、駆け抜け走とフットスライディング走で交互に2本ずつ計測。すると、10メートル通過時間および二塁までの走塁時間、いずれにおいても有意な差は認められなかったという。智弁和歌山のようなトリックプレーが目的でなければ、セーフ後にタッチアウトになりやすい駆け抜け走より、その後もチャンスが続くフットスライディング走を推奨している。


大学日本代表コーチを務める仙台大・森本吉謙監督【写真:加治屋友輝】

■躊躇、怪我のリスク…一塁にはヘッドスライディングより「駆け抜けの方がいい」

 それでは一塁へのヘッドスライディングはどうか。夏の甲子園で最後の打者が一塁に頭から飛び込むシーンはもはや風物詩となっているが、森本監督は「基本的には駆け抜けの方がいいと思います」と断言する。

「ヘッドスライディングだと躊躇もありますし、あとは怪我のリスクもあります。見やすい、見えにくいというジャッジの点に関しても、駆け抜けの方が合理的です」

 森本監督は、今年から侍ジャパン大学代表のコーチを務め、7月に開催される「プラハベースボールウイーク」(チェコ)、「ハーレムベースボールウイーク」(オランダ)に帯同。研究対象となるような世界の選手やプレーも多いだろう。

「野球をやっている上で、みなさんが疑問に思っていることは、実はそんなに明らかになっていないことが多いです。それを科学的な手法を使って明らかにできるのであれば、今後もやっていきたいなと思います」

 現場で生まれた疑問を、研究でつまびらかにして、現場へと落とし込んでいく。森本監督は今後も、指導者と学者の両側面から、野球界の発展に寄与していく。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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