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野球を「愛する気持ちが伝わってきた」 身体障害者との出会いに井口資仁氏が感銘

Full-Count / 2024年6月28日 15時4分

身体障害者野球教室で指導する井口資仁氏【写真:編集部】

■22日に東京で身体障害者野球連盟所属選手に野球教室を実施

 2022年までロッテで監督を務め、現役時代は日米球界で活躍した井口資仁氏は現在、野球評論家として忙しい日々を過ごす。と同時に、野球が100年先も多くの人に愛されるスポーツであることを願い、様々な活動に取り組んでいる。22日に明治神宮外苑室内球技場で開催された、身体障害者野球連盟の所属選手を対象とした野球教室もその1つだ。

「いや、選手の皆さんの野球熱はすごかったですね。こうやって(熱心に)取り組む姿勢を(プロの)若い選手たちに見せてあげたいですよ。本当にみんな一生懸命だし、上手くなりたいと思って練習しているのがすごく伝わってくる。今日は実施できてよかったです。僕もすごく勉強になりました」

 2時間の野球教室を終えた後、額にうっすらと汗を浮かべた井口氏はうれしそうに声を弾ませた。

 身体障害者野球に参加する選手たちは大半が成人男性で、四肢または体幹に機能障害があり、義足や車椅子、杖などが必要な人がいれば、片手が欠損していたり麻痺が残る人もいたり、その障害の種類は様々だ。走れなければ代走を出せばいい。道具も補助具をつけたり削ったり使いやすいように改良すればいい。「ルールに障害が合わないのであれば、障害にルールを合わせよう」という柔軟な発想を基に、多くの障害者が野球を楽しんでいる。

 井口氏が初めて身体障害者野球と接したのは昨年6月。名球会の活動として身体障害者野球の日本代表チームと交流を持った時だ。プロとして野球を極めてきた一方で、野球が持つ自分の知らない“顔”に触れ、目から鱗が落ちる思いがしたという。

 現役時代から養護施設訪問や車椅子の寄付を続ける井口氏は、かねてより親交のある不動産会社「MAXIV(マキシヴ)」の槙島法幸氏が社会貢献プロジェクトを立ち上げることを知り、身体障害者野球選手を対象とした野球教室の開催を提案。自身も緑内障のため視力を失った槙島氏は「ぜひ応援したい」と快諾し、今回の実施に至った。


【写真:編集部】

■障害のない井口氏が障害がある選手に送るアドバイス

「MAXIV LIEN PROJECT(マキシヴリアンプロジェクト)」の一環として開催された野球教室には、東京、千葉、埼玉、群馬、静岡から6チーム、約80人が参加。キャッチボールやロングティーに加え、守備練習では井口氏が1人1人にもれなくノックを打つ場面も。室内球技場を満たす参加者の野球熱に突き動かされるかのように、井口氏は精力的に会場を隅から隅まで歩き回り、実演を交えて熱心にアドバイスを送った。

 それぞれが自分の体に合った投球フォームや打撃フォームを見つけ、野球に取り組む選手たちに対し、障害のない井口氏がどのようなアドバイスを送るのか。そんな疑問も沸いてくるだろうが、答えは「基本的な体の使い方はそんなに変わらないと思いますよ」とシンプルだ。

 野球を職業とするプロであれば、多少の怪我を押してでも試合に出場しなければならない時がある。「僕も片手でしか打てない時の打ち方とか、色々な練習をしましたから」。自分が練習していた時のイメージや感覚を思い出しながら「しっかり脇を締めて振るといいですよ」「もう少し体に角度をつけるといいかもしれません」と助言。車椅子を使う選手に打撃の質問を受けると、自ら膝立ちになって同じような状態を作り、実演してみせた。

「どうしても腰が固定されてしまうので、回転できないというか、バットが外回りになって引っ掛けるような打球が増えてしまう。回転できない状態でセンター方向に打ち返すにはどうしたらいいか。それには打席に入った時の体の角度が大事になってくる。これはキャッチボールの時も同じ。どの角度が一番いいかという話をしました」

 それまでゴロになる打球が多かったが、アドバイスを受けた後はライナー性の打球が増えた。もちろん上手くいかないスイングもあるが、以前とは違う手応えを掴んだ様子。チームメートに「良かったな!」と声を掛けられると、はみ出しそうなほど大きな笑顔を見せた。


【写真:編集部】

■「野球が何十年後か先にしっかり繋がるように」

 毎年全国各地を訪問し、小中学生を対象とする野球教室を開催する井口氏は「今日の参加者は普段よりも年齢は上でしたけど(笑)、それでも伝わってくる野球愛はすごいし、本気で草野球をする人たちと変わらぬ熱さがありますよね」と大きな目を輝かせる。自身がこれまで携わってきたプロ野球やMLB、大学野球、高校野球とはひと味違う身体障害者野球に出会ったことで、ユニホームを脱いだ後もなお、野球というスポーツが持つ魅力、懐の深さ、可能性の大きさを実感できたことが、何よりも嬉しいようだ。

「障害があるとかないとか関係なく、野球を愛する気持ちが伝わってきた。少子化という懸念もありますけど、野球が何十年後か先にしっかり繋がるように、我々もしっかり伝えていきたいと思います」

 日本に浸透しつつある「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉に乗った、1回限りの打ち上げ花火で終わらせるつもりはない。「福祉施設訪問とあわせ、この野球教室も継続してやっていきたいと思います」。井口氏のライフワークに新たな取り組みが加わったようだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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