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見てしまった誹謗中傷「人格を否定される」 涙で向かった球場…戦力外からの再出発

Full-Count / 2024年6月29日 7時10分

元西武で現球団職員の中山誠吾さん【写真:篠崎有理枝】

■元西武内野手の中山誠吾さん、昨季限りで引退→球団職員に転身

 一つのプレーが、その後の人生を左右した。元西武内野手の中山誠吾さんは、2022年のプロデビュー戦で、痛恨のエラーを喫した。それから1軍出場はなく、2023年オフに戦力外に。わずか2年間のプロ野球人生だった。今年3月からは球団職員に転身。営業部員として、新たな一歩を踏み出した。

 2021年のドラフト6位で白鴎大から西武に入団。2022年5月7日、本拠地での日本ハム戦でプロ初出場を飾った。不動のレギュラー・源田壮亮内野手の故障離脱により初昇格し、「8番・遊撃」で即スタメンに名を連ねた。

 2-1と1点リードで迎えた6回無死一塁の守備だった。バント処理をした投手の送球は二塁へ。ベースカバーに入った中山さんは、グラブに当て落球した。いったんはアウトとなったが、リプレー検証で判定が覆り、遊撃手の失策が記録された。そこからチームは逆転を許して敗戦。

「もう、本当に情けない話なんですけど、あのエラーがあって、すごい本当に精神的にきてしまって……」。トラウマとして刻まれ、SNS上での誹謗中傷は知りたくなくても、耳に届いた。

■起床時間よりも前に敢えてアラームセット「まだ起きる時間じゃない」

「自分からは見ないんですけど、ご丁寧に知らせてくれる人がいるんですよね。『こんなこと書かれてたよ』って。軽い気持ちだと思うんですけど、言われると見ちゃうじゃないですか。人格を否定されるんですよ。中にはあたたかいコメントもあるんですけど、10個のあたたかいコメントより、一つの厳しいコメントが心に残ってしまう精神状態でした。球場だけならまだしも、SNSは一日中それが降りかかってくるんです。もちろん、私が未熟でエラーをしてしまったことが悪いんですけど……」

 それからしばらく、グラウンドに行くのが嫌だった。朝が来たら一日が始まってしまう。だから、夜は眠りたくなかった。起床時間より早い午前5時にアラームをセットし「まだ起きる時間じゃないな」と、一度自分を落ち着かせる時間が必要だった。毎日、目に涙を浮かべながら球場に向かった。

「私がエラーをした際、当時の辻(発彦)監督も、メディアに『自分も嫌というほど経験した』とコメントしてくださって、誰もが通る道なのかなとは思いました。それを自分で乗り越えないといけないっていうのはわかっているんですけど、心の整理がつきませんでした」

 1軍初出場から6日後に出場選手登録を抹消された。即座の再昇格を目指したが、2軍で打率.149、翌2023年も打率.187と振るわなかった。技術、実力の問題もある。だが「1軍に上がったら、また怖い思いをするのではないか」という不安が常につきまとった。

「頑張らなければいけないことはわかっていました。でも、本当に矛盾しているんですけど、2軍の試合中に『ここでヒットを打ったら、上がっちゃうんじゃないかな。1軍に行きたくないな』と考えるようになってしまって……。そこまで嫌だったら、もう野球をやらない方がいいんじゃないかという気持ちも正直ありました」

■「何とも言えない気持ちになる」…同期の活躍を発奮材料に

 昨季限りで戦力外を通告され、12球団合同トライアウトに参加。NPB以外のいくつかのチームから声がかかったが「お世話になったライオンズの力になりたい」と、球団職員の打診を快諾した。

 2021年ドラフトの同期では、隅田知一郎投手や佐藤隼輔投手、古賀悠斗捕手が1軍の主力に。羽田慎之介投手、黒田将矢投手は飛躍が期待されている。育成入団の古市尊捕手、滝澤夏央内野手、菅井信也投手は支配下登録を勝ち取った。

「同期が活躍している姿を見ると、何とも言えない気持ちにはなります」。応援する気持ちとともに、複雑な思いも隠せない。現役に未練がないと言ったら?になる。だが「10年後、20年後に彼らより活躍できているように頑張りたいです」と前を向く。第2の人生はまだ始まったばかり。グラウンドに立つ同期たちを発奮材料に、力強く歩んでいく。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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