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プロ野球選手が“普通の社会人”になる不安 大学以来のPC操作…刺激だらけの日々

Full-Count / 2024年6月30日 7時10分

元西武で現球団職員の中山誠吾さん【写真:篠崎有理枝】

■元西武内野手の中山誠吾さん「選手上がりのセカンドキャリアの見本になりたい」

 身長190センチの大きな体をかがめ、名刺を交換するビジネス作法は、すでに板についている。元西武内野手の中山誠吾さんは、2年間のプロ人生にピリオドを打ち、今年3月から球団営業部の職員として働き始めた。「日々勉強です」。グラウンドでの厳しい表情はすっかり消え、屈託のない笑顔を浮かべる。

 2021年のドラフト6位で白鴎大から西武に入団。1年目の2022年5月にはプロ初出場を果たしたが、その試合で痛恨の失策を喫し、その後は一度も1軍でプレーすることはなかった。2年目の昨季後半には、戦力外を予感した。「1年目は期待していただいていたと思うんですけど、2年目はちょうど3軍ができた年で、ほぼ3軍でした。大卒ですし、厳しいかなと思っていました」。頭の中では分かってはいたが、球団から戦力外を通告されたときは「もうきたか」と思った。

「野球をやってる以上、いつか辞めなければいけない時が来ることはわかっていましたし、それだけ厳しい世界だということも承知していました。次のことも考えなければいけないとは思っていたんですけど『どうしようかな』って思っているうちに時が過ぎてしまって……」。野球以外にやりたいことが思いつかなかった。そんな時、西武から球団職員のオファーを受けた。

 当然、不安もあった。「勉強して社会人になった方たちと同じ土俵に立った時、皆さんの足を引っ張らないですか?」と素直な気持ちを打ち明けると、「勉強も大事だけど、人柄やコミュニケーションスキルが大切だから」との答えが返ってきた。プロの道を開いてくれた西武への恩返し。「私がこの会社に普通に入れるかと言われたら『どうなのかな』というところなので(笑)。ありがたいお話です」とユニホームを脱いだ。

■PCは大学時代のレポート提出で使った程度…右も左もわからぬ会社員生活

 会社員としての生活は、右も左もわからない状態から始まった。パソコンを使った経験は、大学のレポート提出の時くらいだった。ソフトの使い方は、SNSやYouTubeで検索。それでも分からない時は、周囲の先輩たちに助けを求めている。4月からは一人で外回りに出ている。

「企業様に向けて、広告やシーズンシートのご案内をしていて、日本全国どこにでも行きます。毎日新しいことの連続なので戸惑うことが多いですが、それを吸収して、これから仕事に慣れた時に『そんな時があったな』と思えるように頑張っています」

 2021年のドラフト同期では、隅田知一郎投手や佐藤隼輔投手、古賀悠斗捕手が1軍の主力に。羽田慎之介投手や黒田将矢投手らは将来を嘱望されている。「私がもうちょっと頑張っていれば、すごいドラフトですよね」。中山さんは苦笑いを浮かべるが、今は新たな目標ができた。

「選手上がりのセカンドキャリアの見本になりたいと思っています。後輩が入ってきた時に『俺はこういう苦労したけど、大丈夫だよ』って言えるようになりたいです」

 わずか2年のプロ生活よりも、ずっとずっと長い第2の人生。戦う場所は違えど、同期に負けない活躍をしてみせる。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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