投球動作は「肘下げない」 全凝縮のキャッチボール…“黄金期の子”を伸ばす指導術
Full-Count / 2024年7月2日 7時50分
■愛知・北名古屋ドリームスは小学3、4年生の育成に尽力…指導は「しつこく」
運動能力を高める“黄金期”の指導の鍵は「粘り強さ」にある。愛知県北名古屋市の学童野球チーム「北名古屋ドリームス」は、小学3、4年生(8~10歳)の指導に力を入れ、選手数の安定やチーム力向上につなげている。投げる・捕る・打つの基礎の徹底から将来につながる応用まで、子どもたちの集中力を切らさないコーチングで上達に導く、そのメソッドに迫った。
2006年創設の北名古屋ドリームス(以下、ドリームス)は現在、小学5、6年生の「トップ」、3、4年生の「ジュニア」、2年生以下の「キッズ」にカテゴリー分けし、土日の午前9時から午後5時まで練習を行っている。特に中学年の「ジュニア」の指導に力を入れることで、2021年には「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で準優勝に輝くなどのチーム力向上や、部員数増にもつなげている。
4年生16人、3年生13人が所属するジュニアの指導を行うのは、小林正明ジュニア監督と篠田進太郎コーチ。ウオームアップも兼ねた走塁練習からキャッチボール、守備練習、打撃練習、実戦形式とテンポ良く進んでいくが、初めの走塁から1本1本、実戦を想定して行っている様子が見て取れる。キャッチボールでも、まずドリルで投球動作を確認し、送球動作やタッチプレーを交えるというように、段階を踏まえつつも実戦的だ。
トップチームを率いる岡秀信監督は、小林監督と篠田コーチを「うちの指導者の中でも、“しつこさ”ではナンバー1、2です(笑)」と評する。野球で大事な要素を8~10歳の子たちに教え込むには、何よりも繰り返し、粘り強く伝えることが手段だ。「目を離したらサボりたくなる年代。どれだけ1人1人の子をしっかり見ることができるかが大事になります」。
確かにタッチプレー1つにしても、グラウンドに響く2人の指導する声はこと細かい。小林監督にあるのは「ドリームスに入ってくれたからには、他のチームの子よりも“野球”を覚えてほしい」という思いだ。自身の2人の息子も、ドリームス時代に技術・戦術を身に付けたおかげで高校・大学野球で評価を得ることができたという。「この子たちにも後々『ドリームスの選手で良かった』と思ってほしいし、保護者の方にも『入れて良かった』と感じてもらいたい。そのためにも、しつこく、しつこくです」とうなずく。
三角キャッチボールに取り組む選手たち【写真:高橋幸司】
■野球の中で起こり得るプレーは、小学3、4年生だからこそ「やらせたい」
投球ドリルは、【1】握ったボールを頭の後ろに位置させ、足は動かさず上半身の捻り(肩の入れ替え)で投げる、【2】前足を踏み出し「前→後→前」の体重移動を意識して投げる、【3】前の2つを合わせて上・下半身の連動を意識して投げる、と3段階で行う。特に注意するのは怪我につながる「肘の下がった投げ方」だといい、「平日に家でやる際にも、同じようにやってくださいと保護者にはお願いしています」と小林監督。
そうした基本動作を押さえた上で行うのが、名物練習の「三角キャッチボール」だ。文字通り3人が三角形に位置取って投げ合うのだが、素早い握り替え、捕球・投球体勢づくり、正確な送球が求められる。そして、ドリームスの3、4年生たちはこの年代とは思えないほど上手にこなす。これができれば、内外野どこでも対応できるし、勝利を求めるトップチームに上がっても戸惑うことはないだろう。
「試合前に時間がない時には、これをやるだけでも準備になります。三角キャッチボールを見た対戦相手から、『勝てないと思った』と言われたこともあります。それだけ、野球の全てが詰まった練習だと思います」(小林監督)
さらに、基礎を大事にしながら、「応用」にも積極的に取り組ませる。守備練習では逆シングル捕球やジャンピングスローも。「野球の中で起こり得るプレーは、この年代だからこそやらせたいんです」と小林監督は力を込める。
確かに、神経系が最も発達し、脳への刺激によって野球勘やボール感覚が最も育まれるのは、「ゴールデンエイジ」と呼ばれるこの10歳前後だ。「1回でもいいから練習をして、プレーのアイデアや引き出しは増やしておいた方がいい。いざという時に助けられるのは、体力ではなく“技”ですから」と、トップチームを率いる岡監督も語る。
基礎を大事にしつつ、チャレンジ精神も引き出す。それが、“黄金期”の子どもたちを意欲的にし、将来の可能性を広げるポイントなのかもしれない。(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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