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契約解除→妻と毎日喧嘩「電話をしろ」 中日入りの裏で…まさかの人物からラブコール

Full-Count / 2024年7月5日 7時10分

西武でプレーした笘篠誠治氏【写真:湯浅大】

■笘篠誠治は選手、コーチとして計25年間西武に在籍した

 西武で15年プレーした笘篠誠治氏は1997年シーズンで現役を引退。1998年からは、そのままコーチとして2007年まで10年間所属した。2008年からは中日の首脳陣に入閣。2007年の日本シリーズ第2戦直後、電話口の落合博満監督から「トマ、悪いな。手伝ってくれないか」で決まったという。

 西武のコーチを10年間務めた笘篠氏は2007年シーズン限りで当時の伊東勤監督とともに契約を解除された。「さあ、どうしようかと。基本的にアチコチに連絡して『お願いだからコーチをやらせてください』というのはゴマすりみたいで好きじゃなかった」。そこで西武で共に過ごし、同年は中日のバッテリーチーフコーチだった森繁和だけには相談しようと決めていた。

「頼れるのは森さんしかいなかったので」。ただ、その頃の中日はシーズン2位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本ハムとの日本シリーズを戦っている真っ最中だった。「女房は毎日、森さんに電話をしろと言うわけです。『ないならないで別の仕事を探す必要がある』と。でも中日はまだ戦っているわけですから『シリーズが終わったらかけるから、待っとけ』と。もう、毎日喧嘩でした(笑)」

 そうして、中日が8-1で勝った日本シリーズ第2戦のテレビ中継が終わった直後だった。突然、笘篠氏の携帯電話が鳴った。森からの着信だった。「もしもし、森さん。ナイスゲームでした」「おお、ありがとうな。ところでお前、来年はどうするんだ?」。期せずして“核心”のテーマに触れた。

「ライオンズから契約解除されました」「おお、聞いたよ。新聞にも出ていたしな。で、どうするんよ」「日本シリーズが終わったらシゲ(森)さんに電話しようと思っていたんです。どこか探しているんですけど、まだどこにも当たっていないんです」。すると想定外の話が飛んできた。

■「落合博満がどんな野球をするのか興味津々でした」

「落合さんが手伝えと言っている。名古屋来れるか?」

 まさかのオファーだった。返答に迷う必要はない。「雇ってくださるなら名古屋でもどこでも行きます」。この言葉を聞いた森は「ちょっと待ってくれ」と電話口を変わった。

「トマ、悪いな。俺とりあえず、来年までの4年契約だから1年だけかもしれないけど、手伝ってくれないか」

 落合監督だった。グラウンドでは挨拶程度は交わしていたが、深い面識はなかった。「おそらく森さんが推してくれたのだと思います。あの、落合博満がどんな野球をするのか興味津々でした。単身赴任でもなんでもいきます、と言いましたよ」。まだ、日本シリーズを戦っている最中で、しかも試合直後の札幌ドームのコーチ室からの“ラブコール”に心が震えた。

 一瞬で決まった就職先。千恵子夫人もひと安心。「単身赴任になることも伝えましたが『どうぞどうぞ、行ってらっしゃい』って感じでしたよ」。選手で15年、コーチで10年を過ごした西武を飛び出し、新たなキャリアへの扉は、急転直下で開いた。(湯浅大 / Dai Yuasa)

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