「負けたら引退」打破へ…高3球児が北の大地で“売り込み” 親にも示したい挑戦心
Full-Count / 2024年7月5日 12時52分
■今夏初開催、高校3年生対象「リーガサマーキャンプ」が最終エントリー募集
高3の夏を都道府県大会だけで終わらせない──をテーマに、この夏に初めて開催される「リーガサマーキャンプ 2024 in 北海道」。8月7日から18日まで、夏の甲子園大会出場を逃した高校3年生が個人参加型で北海道に集まり、4チームに分かれてリーグ戦を行う。
「日本には高校の野球部に3年間所属し、一生懸命練習しても、公式戦に1試合も出場できないまま引退する選手たちがいます。出場できた選手たちも、半数が1試合きりで最後の夏を終えることになる。不完全燃焼の選手、親に試合に出場している姿を見せたいと切望する選手、進学や就職へ向けてアピールしたい選手などにチャンスを与えたい」。主催者の一般社団法人「Japan Baseball Innovation」代表理事・阪長友仁氏は、開催の意図をこう説明する。
同キャンプは、前侍ジャパン監督・栗山英樹氏の居住地として知られる北海道栗山町をメーン会場として行われる。両翼98メートル、中堅122メートルの栗山町民球場で、期間中に6~8試合を予定。17日の最終試合は北海道日本ハムファイターズの本拠地・エスコンフィールドで行われる。その他にも、かつてNPBで活躍した大引啓次氏(元オリックス、日本ハム、ヤクルト内野手)、荻野忠寛氏(元ロッテ投手)による直接指導、エスコンフィールドでの日本ハム戦観戦やスタジアムツアー、北海道ならではの酪農体験などが、プログラムに組み込まれている。
阪長氏によると、既に参加を表明している高3球児は概ね、次のようなケースに分かれるという。
1、プロ志望で、甲子園に出場できなかった場合のアピールの場と考えている(甲子園に出場できた場合は、同キャンプはキャンセルする可能性が高い)。
2、現実的に甲子園出場は難しいが、社会人や大学で野球を続けることを希望しており、関係者に実力をアピールしたいと考えている。
3、強豪校の野球部に3年間所属したものの、出場機会に恵まず悔いが残る。
4、常に初戦敗退するようなチームに所属している。
野球部を途中で辞めた選手、高校で野球部に所属しなかったがチャレンジしたい選手も少数含まれているという。
「リーガサマーキャンプ」を主催する阪長友仁氏【写真:宮脇広久】
■木製バットを使用、新素材「ダケカンバ」製40本が大会に提供される予定
計60~80人の参加を想定。今月21日までの予定で募集をしている最終エントリーでは、既に相当数の応募があった一塁手と外野手は“要相談”。投手、捕手、二塁手、三塁手、遊撃手に関しては、まだ枠があるという。基本的に先着順でエントリーを受け付けている。
プロ、社会人野球、大学野球部のスカウトの目に触れる機会になればとも考えている。実際に、阪長氏は社会人や大学関係者に働きかけており、「この時期に北海道でキャンプを張っている大学野球部もあり、前向きに視察を検討してくれているところもあります」と明かす。
参加費は1人26万9500円(税込み)+集合地の札幌までの交通費で、そこには宿泊費、食費、ユニホーム代などが含まれている。エントリー後も甲子園出場によるキャンセルには、期日内であれば無料で対応する。日本学生野球憲章との兼ね合いもあって、協賛企業はつかないが、運営費の不足を補うため、法人への寄付などを募集している。
試合は木製バットを使用。選手個々が持参する他、北海道大学の研究者から「ダケカンバ」材のバット40本が提供される予定だという。ダケカンバは北海道に広く自生し、アオダモの枯渇などを受けて、新たなバット材として注目されているところだ。栗山町民球場でも、エスコンフィールドでも、観戦は無料。実況配信も行う方向である。
様々な思いや新機軸を盛り込んだ同キャンプ。主催者の阪長氏は、新潟明訓高3年の夏に甲子園出場を果たし、立大野球部では主将。スリランカとタイで代表コーチ、ガーナで代表監督を務め、野球強豪国のドミニカ共和国の育成システムについて見聞を広めるなど、ユニークな球歴を歩んできた。「まずは“高3夏の都道府県大会で負けたら引退”という固定観念を打破したい」と語り、多様性のある柔軟なシステムづくりを志している(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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