「ストライク入らない」「肩痛い」…悩み解決する“実戦形式” 親子で盛り上がる魅力
Full-Count / 2024年7月6日 7時5分
■愛知・北名古屋ドリームス考案…低学年が楽しめる投球マシン活用の「PMBB」
子どもたちがスポーツの楽しさを体感するには、実際に試合をやるのが一番だ。ところが野球の場合、特に小学校低学年には「ストライクが入らない」「バットに当たらない」などのハードルがあるため、試合経験ができないうちに野球が嫌になることにもなりかねない。そこで、愛知の学童野球チーム「北名古屋ドリームス」が考案したのがPMBB(ピッチングマシン・ベースボール)。投球マシンを使った試合形式によって、小さい子でも野球が楽しく、ルールも身に付けられるという。
北名古屋ドリームス(以下、ドリームス)は小学5、6年生の「トップ」、3、4年生の「ジュニア」、2年生以下の「キッズ」の3カテゴリーで週末土日に活動を行っている。取材したのは3年生と2年生のPMBBのゲーム。カテゴリーの枠を越えての対決だ。
ルールを簡単に説明すると、投手の代わりに投球マシンを“起用”するのが一番のポイントで、DHを含めた9対9で対戦。フィールドのサイズは、マシン-本塁間が10メートル、塁間21メートル、両翼40メートル、中堅45メートル。一塁は故障予防にダブルベースを使う。マシン付近に球が直接当たったり、転がって止まったりした場合はアウト。
5イニング60分制で、盗塁はNGだが、3アウトで攻守交代などは通常の試合とほぼ同じ。また、4イニング以降は全員が守備位置を変えるのも特徴で、「早い段階でいろいろなポジションを経験してもらうためです」と、トップチームを率いる岡秀信監督は説明する。
マシンにボールを入れるのは攻撃側の指導者の役割。とはいえ、小さい子どもたちで“試合”になるのか……。これが、きちんとなるのだ。もちろん、日頃の基礎練習があってこそだが、2年生も互角に渡り合い、ホームランもファインプレーも飛び出した。取材の日は2試合行ったが、いずれも1時間以内でテンポよく進行。4回以降の守備位置変更で、ゲームの流れが変わったりするのもスリルがあった。
本塁打狙いで思い切りスイングする子が現れるのが面白い。低学年向けのゲーム形式だと置きティーを使う「ティーボール」が思い浮かぶが、「前から来るボールを打ち返す。やはりそれが、子どもたちにとって何よりも楽しいし、盛り上がるんですよ」と岡監督。この日2アーチを放った3年生の杉戸悠臣くんは、「バットの芯にボールが当たるように心がけました。楽しかったです」とうれしそうに話してくれた。
本塁打狙いで豪快にフルスイングする子もいた【写真:高橋幸司】
■インフィールドフライにランダウンプレー…試合の中でルールが身に付く
投球マシンを使ったPMBBには、低学年の子にも、そして大人にもメリットがある。
何より機械であるため、打てる球がきちんと来るし、ゲームが成立する。小さい子に打ちやすい球を投げるのは、大人でも難しい。ストライクが一向に入らずに見学のお母さんたちがガッカリ……ということも、マシンならば、ない。
そして、試合として成り立つということは、試合の中でしか経験できないプレーやルールを、低学年のうちから体感できる。
「インフィールドフライがあったり、ランダウンプレーで走者が重なったり、いろんな場面が生まれて、ルールも覚えられます。また、アウトカウントは上級生でもたまに間違うことがありますが、アウトカウントの“感覚”を試合の中で身に付けられるのも、早いに越したことはありません」(岡監督)
2年生チームを率いた田島雄キッズチーム監督も効果を認める。「エラーは仕方がないので思い切ってやろう。三振も怖がらないで、と話しました」と言い、「取れるアウトを確実に取るためにも、普段のキャッチボールは大切になるよね、という話にもつながります。2年生で“試合慣れ”できるのは本当に大きいと思います」と実感を込める。
投球マシンといえば、中古でも何十万円もする高価なイメージが根強いが、現在では安価で、バッテリー式で持ち運びしやすい海外製のマシンも登場しているという。
ドリームスの中学軟式部門「北名古屋ベースボールクラブ」の代表で、スポーツ教室運営や用品販売も手掛けている岡将志さんは、「(指導者や保護者の)お父さんたちが『みんな肩が痛くなってきたのでマシンを買いたい』という声を、最近は本当によく聞きます。お金で解決できることは解決して、大人も子どもも、どんどん野球を楽しめるようにするのがいいと思います」と語る。
ドリームスでは近隣チームの低学年に呼びかけて、PMBBの大会を開催していく意向だ。「ストライクが入らないからできないとか、やれない理由ばかり見つけるのではなく、できる方法をみんなで考えていければいいですね」と岡監督。アイデア次第で魅力を広げる施策はたくさんある。野球が持つポテンシャルの高さを改めて感じさせられた。(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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