西武から加入の新指揮官「お前は楽だった」 痛感した差…2年連続最下位に「やっぱりか」
Full-Count / 2024年7月11日 7時10分
■初芝清氏は1990年の“千葉マリンこけら落とし”で初本塁打
ロッテ一筋17年間プレーし、「ミスターロッテ」と称された初芝清氏は現在、社会人野球「オールフロンティア」で監督を務める。プロ4年目の1992年からロッテは本拠地が川崎球場から千葉マリンスタジアム(現・ZOZOマリン)に移り、チーム名も「ロッテ・オリオンズ」から「千葉ロッテ・マリーンズ」に変わった。“お引っ越し”にまつわる思い出を語った。
初芝氏は選手間で話がちらほらと飛び交った頃の記憶を辿る。「最初は“らしいよ”くらいの情報しか出なかった。川崎から移転するかもしれないよ、みたいな感じでしたね。でも千葉だし、どうなんろう、と」。どちらかと言えば懐疑的だった。
千葉・幕張にある千葉マリンは1990年に開場した。「こけら落とし」はプロ野球オープン戦で、3月24日の巨人対ロッテ。「僕らはビジターでした。本拠地になるかもしれない球場なのにビジター。だから移転の噂を聞いていても、どうなの? と思っていました」。とはいえ、初芝氏はこの一戦でマリン第1号本塁打を放って賞金をゲット。その後に「幕張のファンタジスタ」とも呼ばれる雄姿を既に披露していた。
川崎球場が本拠地だった1991年7月31日、重光昭夫・球団社長代行(現オーナー)が千葉移転を表明した。この日、ロッテは初めて千葉マリン主催ゲームを行っていたのだが、西武に2-3で惜敗。ここでも初芝氏は「7番・三塁」で先発出場し、3打数1安打1打点と気を吐いた。本拠地移転は、秋のオーナー会議で正式に決まった。
関東地方でも川崎と千葉では、かなり離れている。「僕は川崎で一人暮らしでした。千葉に移転するのが結婚する時期と丁度重なったので、それを機に千葉で奥さんと一緒に住みました」。他の選手はどうだったのか。「当初は川崎方面から通う人もいましたね。ナイターの翌日がデーゲームならば、球団が手配してくれて千葉のホテルに泊まれます。でもデー、デーだと帰らなきゃいけなかった」。生活の基盤を整える苦労もあった。
チーム名が「マリーンズ」となり、ユニホームが一新された。「オリオンズ」時代は胸にブロック体で「LOTTE」の赤い文字だったのが、筆記体で「Marines」のピンク色に。「あの頃の球界にはピンクって、まだ無かった色でした。そういうのも新しい感じで、みんな『おー、ユニホームが何かこれまでと違うぞ』とか言ってましたね」と笑う。
■八木沢監督が率いたマリン元年は4月に首位も失速…2年連続最下位に
「千葉ロッテ」の船出は、新しい指揮官が率いた。球団OBで、前年の1991年まで西武投手コーチを11年間担った八木沢荘六監督。初芝氏にとっては、これまでは敵対していたチームの頭脳だ。興味津々で質問してみた。
「監督、ライオンズから僕はどう見えていたんですか?」
指揮官はこう答えた。「最初のストライクを空振りかファウルで取ったら、次の投球では絶対に振らないんだよ。ストライクでもボールでも。100パーセント近く出ているデータがあったんだ。お前がファウルを打ったら楽だった。振ってこないから簡単に2ストライク目が取れる。西武の投手には『次は真ん中に放れ』と指示していたよ」。
初芝氏は述懐する。「八木沢さんの話を伺い、へー、そうなんだと本当にびっくりしましたね。そういうデータも西武は取ってるんだ、と。ロッテも資料としてデータは配られるけど、そこまではやってないですから。全体ミーティングは、あんまり記憶にないですし。ミーティングをやらない事に違和感がなかったです」。王者との違いを痛感させられた。
幕張名物の強風には、やはり戸惑った。「試合をすればする程、とんでもない風と分かってきました」。驚愕した場面があった。「西武戦でセカンドが辻(発彦)さん、一塁がキヨ(清原和博)、捕手が伊東(勤)さん。誰が打ったかまでは覚えてないけど、右翼への大飛球が投手とキャッチャーの間に落ちた。辻さんも後ろを向いたんですよ。ピッチャーも打球が飛んで行ったと思ってたから捕れない。それだけ押し戻されるのです」。
「千葉ロッテ」の1年目は、4月を首位で通過した。新しい環境、ユニホーム、監督で強烈な旋風を巻き起こしたはずが、シーズンが終わってみると2年連続の最下位。「現場は『今年はいけんじゃねーの』という気にはなりました。それが5月が始まると『あー、やっぱりか』。落ちるの早いんですよね。連敗し出すと止まらない」。初芝氏が自身初のAクラスを体験するのは、まだ先のことだった。(西村大輔 / Taisuke Nishimura)
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