進化の鍵は“魔球”…急成長のオリ23歳 課題半減→安定抜群のゲームメークへ
Full-Count / 2024年7月29日 17時12分
■オリックス・曽谷龍平の進化…鍵は「フォーク」
2022年のドラフト会議で白鴎大から1位指名でオリックスに入団した曽谷龍平投手。ルーキーイヤーの昨季は、ウエスタン・リーグで最多の奪三振数を記録するも、1軍では7試合に先発して1勝にとどまり、課題も残すシーズンとなった。
迎えた2年目の今季は、ここまでチーム3位の70回1/3を投げて防御率2.30を記録するなど、先発ローテーションの一角として活躍。昨オフにメジャーへ移籍した山本由伸投手や日本ハムにFA移籍した山崎福也投手の穴を埋める好投を続けている。(※文章、表中の数字はすべて2024年7月19日終了時点)
昨季から成績を向上させた要素のひとつに、制球が安定したことが挙げられる。昨季は先発登板時の与四球割合が10.9%(リーグ平均7.5%)とコントロールに課題を抱えており、球数が増えていくと制球を乱す場面が目立っていた。特に60球を超えた辺りから与四球が大幅に増えてしまっており、早いイニングでマウンドを降りる要因にもなっていた。
今季は、与四球割合を昨季から半減近くの5.6%に抑えており、制球難から崩れなくなったことがわかる。昨季は7試合に先発登板して6イニング以上を記録したのは、プロ初勝利を挙げた10月9日のソフトバンク戦のみだったが、今季は平均投球回5.86と先発投手として安定したゲームメークができている。
与四球が減少した理由を探るべく配球に注目すると、今季はカウント球の割合に大きな変化が見られた。昨季までは最も割合の少なかったフォークを0、1ストライク時の場面で多投しており、その割合は30.9%に急上昇している。
これはフォークを投じたパ・リーグの110投手中8番目の投球割合となっている。一般的にフォークは追い込んでからの決め球として使用されるケースが多く、昨季までの曽谷投手も同様の傾向となっていた。ところが、今季は2ストライクに追い込むと投球割合は23.4%とむしろ減少しており、フォークの使いどころが特異な投手となっている。
曽谷のフォークは投じられたコースにも特徴的な点がある。投球の45.5%がストライクゾーン内に投じられており、その割合はリーグで3番目の高さとなっている。フォークは低めのボールゾーンに落とす投手が多い中、曽谷はストライクゾーンでカウントを稼ぐ球、打たせて取る球種として使用しているようだ。
浅いカウントで、かつストライクゾーンに集めるような使い方をするようになったことで、フォークの被打率は前年から悪化しているものの、投球全体のストライク率は6.1ポイント上昇。フォークがカウント球として機能するようになったことで、与四球の減少やトータルでの被打率の改善を生み出していた。
また、与四球の減少のほかに、もう1つ成績を改善させた要素があった。それは左打者への対策である。一般的に左投手と左打者の対戦においては投手が有利という傾向があるが、昨季の曽谷は左打者に対して被打率.333、OPS.803と苦戦していた。しかし、今季は対左打者の被打率が.234と大幅に改善。さらに、対戦123打席で許した長打は二塁打1本のみに封じ込んでおり、左打者に対してOPS.535と劇的に成績を良化させている。
ここでも、配球に注目してみたい。カウント球と同様に左打者に対しても、フォークの投球割合が昨季の5.1%から今季は30.1%に急上昇していた。昨季は左打者に対してストレートの被OPSが.997と打ち込まれていたが、今季は直球の割合を減らして、フォークを増やした。
左打者に対してフォークのような落ちる変化球を投げきれる左投手は球界でも少ないが、曽谷はパ・リーグの左腕で2番目に高い割合で左投手に落ちる変化球を投じる投手へと変貌を遂げている。左打者にとっては対戦機会の少ない軌道となる曽谷投手のフォークは、OPS.387と威力を発揮しており、対戦成績を大きく改善することにつながった。
もともと150キロを超えるストレートと曲がりの大きなスライダーで、高い奪三振能力を有していた。今季はそこにフォークという新たな武器が投球の軸として加わり、昨季までの課題を乗り越えてブレークを果たした。6月以降は防御率1.21と抜群の安定感を誇っており、チームに欠かせない主力へと成長を遂げている。4年連続となる日本シリーズの進出へ向け、2年目左腕の後半戦でのさらなる活躍に注目したい。(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
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