日本型“トップダウン指導”に疑問 米国渡って151キロ…「球速向上コーチング」の原点
Full-Count / 2024年8月2日 7時5分
■野球アカデミー「Be an Elite」運営…松本憲明氏が米国で固めた決意
「過去の自分のために(アカデミーを)つくったと言ってもいいかもしれないですね」。愛知県名古屋市で球速アップに特化した米国式野球アカデミー「Be an Elite」を運営する松本憲明さんは、過去の自分のように伸び悩む投手の成長を後押ししようと指導に励んでいる。Full-Countでは、全国の注目野球塾の指導方針やこだわりの練習法などを取材。松本さんの指導者としての原点を探った。
松本さんは名門・愛工大名電を経て東洋大に進学したが、大学1年の秋に肘を故障しトミー・ジョン手術を経験。チーム内には150キロ前後の速球を投げる投手が多数おり、出遅れを感じた松本さんは2年の夏に大学を中退した。
故障が完治して投げられるようになってからは、再び野球をする場所を模索し、日本のほとんどの独立リーグ球団に電話をかけた。トライアウトのタイミングが合わず断られ続ける中、縁のあった徳島インディゴソックスに入団。そこで米国のメジャーリーグやマイナーリーグ出身の選手らと接するうちに米国の野球に興味が湧き、2年間在籍したのち、単身海を渡って米国のアカデミーや即席チームでプレーした。
24歳の時に試合で自己最速となる151キロを計測。目標としていたMLB球団との契約こそかなわなかったものの、投手として大きく成長を遂げた。帰国後は野球を離れて商社で働こうと考えていたが、兄の友人の息子の指導を頼まれ個人レッスンを行う中で指導の楽しさを知り、「野球指導を通じて、自分ができることを日本の野球界に届けよう」と決意。2019年に「Be an Elite」を開校した。
「Be an Elite」を運営する松本憲明氏【写真:本人提供】
■日米の野球を知った上で思う「個人の能力を高める指導をした方がいい」
日本では根拠や目的を理解しないまま練習に取り組み、その結果、くすぶり続けた。「もちろん野球は9人しか試合に出られないし、1人しかマウンドに立てないんですけど、誰かを蹴落として上に行かせようとするのではなく、個人の能力を高める指導をした方がいい」。日本と米国の野球指導を比較した上でそう考えるに至った現在は、能力を高められず悩んだ「過去の自分」を1人でも減らそうと、特に小・中学生に対してはメカニクスや理論をもとにした「米国式」の指導を提供している。
さらに「『日本の野球界を良い方向に変えたい』『変えられるのは俺しかいない』というような志を持てたのは、米国に行ったから。米国の文化や指導者と触れ合うことで視野をより広く持てたし、子どもや発展途上の選手への接し方という部分でも勉強になりました」と松本さん。選手とのコミュニケーションも「米国式」を貫く。
「監督やコーチが言ったことに選手が『はい』と返事をするトップダウンの関係に、そもそも疑問を持っていました。米国の指導者は考えさせるときは考えさせながら、親身になって教えてくれたんです」。米国で出会った指導者を参考に、選手の行動や意見に対して必ず「なぜ?」をぶつける。答えを教える「ティーチング」ではなく、選手自身に練習の意味を納得させる「コーチング」を心がけている。
そんな松本さんが確立した「Be an Elite」での練習メニューなどは、8月5日から5夜連続で開催するオンラインイベント「少年野球個人練習EXPO」でも詳しく紹介予定。「米国式」指導の狙いや効果が明らかになる。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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