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同点の無死満塁、2ストライクで降板 有田工エースに訪れた“限界”…124球熱投も涙

Full-Count / 2024年8月7日 16時50分

滋賀学園戦に先発した有田工・石永煌希【写真:加治屋友輝】

■佐賀大会後に発症「痛み止めを飲んでも効きませんでした」

 第106回全国高校野球選手権大会が7日、甲子園球場で開幕。開会式直後の第1試合で有田工(佐賀)が滋賀学園と対戦し、エースの石永煌希投手(3年)が利き腕の左肘に痛みを抱えながら、8回途中まで124球の熱投を演じたが、終盤に突き放され6-10で敗れた。

 初回の守りでは有田工ナインの極度の緊張が、はた目にも見て取れた。1死一、三塁のピンチを背負うと、相手の4番・岡田幸大内野手(3年)が放った飛球に、中堅手の井崎蓮外野手(2年)が目測を誤り頭上を抜かれて(記録は二塁打)、2点を先制される。さらに石永の失策(ゴロをファンブル)と暴投が重なり、この回だけで3点を失った。

 実は石永は佐賀県大会を制した後、左肘痛を発症していた。「昨日10~20球を100%の力で投げた時は大丈夫だったのですが、今日は最初から痛かったです。痛み止めを飲みましたが、効きませんでした」と明かす。一方で「エースナンバーの『1』をもらったからには、甲子園のマウンドは誰にも譲りたくない」という強い思いがあった。

 梅崎信司監督は「ここ数日、石永の調子が良くないのはわかっていましたが、県大会をあいつで勝ってきたので、まずはこの大舞台でも投げさせて、なんとかいけるところまでと考えていました」と祈るような思いだった。石永は佐賀県大会初戦の早稲田佐賀戦で、いきなり延長10回148球完投勝利。神埼との準決勝、鳥栖工との決勝でも、2日連続の9回1失点完投勝利を挙げ、無類のタフネスを発揮していただけに、“登板回避”の選択肢はなかった。

 最速138キロの石永のストレートが、この日はMAX130キロ止まりで、4回以降はさらに落ちて120キロを超えなくなった。それでも100キロ前後のスライダー、80~90キロ台のカーブを混ぜて粘りに粘る。味方打線も奮起し、7回を終えた時点で4-4の同点となっていた。

 しかし、8回に限界がやってきた。ヒットと2失策で無死満塁のピンチをつくり、相手の9番打者・杉本晴基捕手(3年)をカウント0-2と追い込んだところで、梅崎監督は背番号「20」の1年生左腕・田中来空投手へのスイッチを決断したのだった。

■秋の佐賀国体でリベンジのチャンス「いい試合をしたい」

 カウント0-2での投手交代は極めて異例だが、梅崎監督は「満塁になった時点で代えようかと思いましたが、1年生にとってはあまりに酷な場面。たまたまノーボール・ツーストライクになったので、責めて投手有利なカウントで出してあげたいと思いました」という梅崎監督の“親心”だった。しかし田中は、杉本に中前適時打、国仲優星外野手(3年)に左前打を許し、2失策も絡んでこの回に決定的な4点を奪われた。

 最終的に、この試合で有田工の7つもの失策を記録した。途中降板となった石永は「自分がふがいないピッチングをしたせいで、チームに悪い流れをつくってしまいました」と責任を一身に背負い、涙で声を震わせた。梅崎監督は「もう少し早く継投してあげないといけなかった。石永が調子が悪いなりに緩い球を使いながらうまく投げていたので、交代が遅れてしまいました」と猛省した。

 有田工にとっては悔いの残る試合となってしまったが、実は秋にもう1度、鬱憤を晴らすチャンスが残っている。10月に佐賀県で行われる国体に、開催県枠で出場できるのだ。石永は「卒業後は大学に進学して野球を続けたいと考えていますが、その前に、国体では甲子園ベスト8以上のチームと対戦することになるので、まずは肘を直して、いい試合をしたいと思います」と目標を切り替えた。今度こそ体調万全で、気持ちよく高校野球生活を締めくくってほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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