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1試合22奪三振も…高校4登板の不完全燃焼 “遅咲き”147キロ左腕の決意「プロで返したい」

Full-Count / 2024年8月16日 11時47分

「リーガサマーキャンプ」で登板する帯広農・渋谷純希【写真:石川加奈子】

■北海道で高3最後の夏の“延長戦”…「リーガサマーキャンプ」で躍動するプロ注目2投手

 甲子園から1100キロ離れた北海道で、高校3年生のもう1つの夏が佳境を迎えている。栗山町民球場で初開催中の「リーガサマーキャンプ2024 in 北海道」には、今夏甲子園に出場できなかった球児52人が集結。今月9日から4チームに分かれてリーグ戦を行っている。7日目を迎えた15日は、NPB2球団のスカウトが視察する中で2人のプロ注目投手が直接対決した。

 一般社団法人Japan Baseball Innovation(JBI)が主催する「リーガサマーキャンプ2024 in 北海道」は、都道府県大会で敗退し甲子園出場を逃した高校3年生を対象とした個人参加型のリーグ戦。プロ入りへアピールしたい、大学・社会人で野球を続けたい、出場機会に恵まれなかった悔しさを晴らしたいなど、様々な思いを抱えた球児たちが集う。17日午後には日本ハムの本拠地・エスコンフィールド北海道で決勝戦が行われる。

 互いに勝てば、リーグ戦1位が決まる大一番。4勝1敗で首位を走るAGUILAS(アギラス)は181センチ左腕の渋谷純希投手(帯広農)、3勝2敗で追いかけるLEONES(レオネス)は191センチ右腕の石田充冴(じゅうざ、北星学園大付)が先発マウンドに上がった。渋谷が「ライバルでもあり仲間。不甲斐ない試合にしたくないと考えていた」と言えば、石田は「左右違うけれど、(渋谷は)質の良い球を投げる。負けたくない気持ちがあった」と互いに意識して臨んだ。

 渋谷は自己最速を2キロ更新する最速147キロをマークし、5回5安打1失点(自責0)。8三振を奪う好投で、17日の決勝進出に貢献した。No.1ポーズや胴上げに加わり「うれしかった。エスコンではストレートで押す自分の投球をしたい」と目を輝かせた。

 一方の石田は、4回に制球を乱した。球速も自己最速の149キロには届かず。4回途中8安打7失点の結果に「ランナーを出してからの投球が課題。2ストライクからのフォークが甘く入り、1球の怖さが改めて身に染みた」と悔しがった。


リーグ戦1位で17日の決勝進出を決めた「AGUILAS」【写真:石川加奈子】

■自己最速更新する147キロ「このサマーキャンプで全国に名を知られたい」

 渋谷はNPB11球団、石田は12球団が視察に訪れたプロ注目投手だが、ともに今夏は北・南北海道大会に進出することなく、6月の支部予選で敗れた。渋谷は「プロを目指しているので、もっと投げたかった。このサマーキャンプで全国に名を知られたい」と参加を決めた。

 2年夏の左肘手術を経て今春公式戦初登板を果たした渋谷は、デビューこそ遅れたものの、その後の成長は著しい。

 今春の関西遠征で近江(滋賀)打線から5回で9三振を奪うと、夏の大会前には北照の高校日本代表候補左腕、高橋幸佑投手と投げ合って、9回で20三振を奪った。自信をつかみ、進路をプロ1本に絞って臨んだ最後の夏。初戦の帯広緑陽戦では9回2死まで無安打無得点に抑え、22奪三振の快投を見せた。だが、代表決定戦で敗れ、公式戦登板はわずか4試合で終わった。

 不完全燃焼の思いをぶつけ、実力をアピールするため、5キロ減っていた体重を89キロに戻し、万全の状態でこの舞台に乗り込んだ。ここまで3試合14回を投げて24三振を奪い、防御率は2.57。26万9500円と安くはない参加費用を出してくれた両親に「感謝を伝えたいし、プロになって返したい」と思いを打ち明けた。


球速150キロを目標に掲げる北星学園大付・石田充冴【写真:石川加奈子】

■木製バット相手にも苦戦「甲子園に行けなくても力がある選手がいる」

 石田の最後の夏も、悔しいものだった。札幌支部予選初戦の2日前に左足首をねん挫。代表決定戦の札幌第一戦には「甲子園に行くため」とテーピングで足首を固め、痛み止めの注射を打って3番手で登板したものの、白星には届かなかった。

 大会後、何球団かのスカウトが練習を見に来る意向を持っていると伝え聞いた。「いつ来るかわからないし、(来た時に)1回で結果を出さなければいけない。それならば、こういう機会に人が集まるだろうし、そこでアピールをしたい」と考えて、サマーキャンプ参加を決めた。

 木製バット使用ということもあり「最初はもう少し簡単に抑えられるかと思った」と言う。「甲子園に行けないチームにも、これだけやれる選手がいるんだ」と驚き、刺激を受けた。3試合12回2/3を投げて11失点(自責8)という苦い結果にも「一番苦しいのは怪我。結果が出なくて、もがいていられるのは幸せ。次に成功するのを楽しみにするようにならないといけない」と前を向く。

 プロ志望届を提出するか、大学に進学するか、まだ迷っている。「このリーグ戦、エスコンで150キロを目標に掲げたので、まずそれをやれなければ意味がない」と石田。プロへの道を切り開くために自ら設定したハードルクリアを諦めてはいない。涼しい北海道の地で、将来を懸けた高校3年生たちの熱い戦いが繰り広げられている。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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