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早実の名将が敷いた“内野5人シフト” 繰り返し練習も成功の「可能性は3%」、両校の思惑

Full-Count / 2024年8月18日 7時35分

大社戦の指揮を執った早実・和泉実監督【写真:小林靖】

■早実はサヨナラのピンチで内野5人シフトを敷いた

 甲子園がどよめいた。第106回全国高校野球選手権大会は17日に大会第11日が行われ、第4試合で早実(西東京)が大社(島根)に延長11回、タイブレークの末、2-3で敗れた。9回のサヨナラの危機では、早実の和泉実監督が異例の内野5人シフトを敷き、この回の最大のピンチは脱した。勝負の分かれ目でグラウンドにいた当事者たちは何を考えていたのか――。

 壮絶な展開だった。早実は2-1で迎えた9回、無死一、三塁とされると、スクイズで同点に追いつかれた。さらに犠打で1死二、三塁となったサヨナラのピンチに和泉監督が動いた。左翼を西村悟志(1年)に交代させ、投手の右斜め前に配置。内野5人体制の超前進守備だった。滅多に見ることのない究極のシフトに甲子園はどよめいた。

 直後の打者は吸い込まれるように、交代した西村へゴロ。西村は一塁へ送球し2死。その隙に三塁走者も本塁突入を狙ったが、一塁手からの好返球で刺し「7-3-2」のダブルプレーでピンチを凌いだ。この場面、2人しかいない外野に運ばれれば、安打になる可能性は高かった。それでも名将は大社の野球スタイルを考え、スクイズに絞った。

 決断を振り返った和泉監督は「絶対スクイズでサヨナラの場面だった」と説明。交代した西村は、普段は二塁を守る選手で、1番守備が安定していると交代に迷いはなかった。この変則シフトは何度も練習してきた状況だった。それでも、成功の「可能性は3%」と語るほど究極の決断だった。

■大社・石飛文太監督は混乱「どこから来たの?」

 そんな相手の苦渋の決断を目の当たりにした大社の石飛文太監督は、「(シフトに)気づいてなくて……。どよめいたので、(この選手は)どこから来たの? という感じでした」と意外な告白。試合後の取材中に初めて選手交代があったと知った。それほど、混乱した状況だった。

 結果は早実の作戦が完璧に決まった。「でもそこでスクイズは出せませんでした。僕が冷静じゃありませんでした。冷静に見られていたらスクイズでした。スクイズが出来なさそうな場面だったので、逆に」。もし、自身が冷静でスクイズ警戒のシフトと認識していれば、あえてスクイズを敢行。術中にハマったと思わせることで、慌てた相手のミスを狙っていたと明かした。

 緊迫の場面で“5人目の内野”として送り出された西村は、1年生ながら見事に大役をやり切った。これが甲子園初出場。シートノックで見たセカンドからの景色とは全く違う光景だった。「お客さんが後ろにたくさん見えるし、(超前進守備で)打者はすぐ近くにいてすごく不思議な感覚でした」。異様な光景を振り返る。

 最善の努力はしてきた。これ以上ない緊張する場面だったが「自分ならできると思ってプレーしました」と冷静だった。練習通りに打球をさばき、ピンチを脱した瞬間、後ろで守っていた先輩たちの「よくやった!」という言葉が飛び込んできた。

 緻密な作戦、それを体現した選手たち。全てがかみ合ったから名勝負は生まれた。延長11回に惜しくもサヨナラ負けを喫したが、「こんなにいい試合、いい経験をさせてくれてこいつらすげえなと思いました」。名将は涙を流しながら声を振り絞った。9年ぶり30回目出場の名門の夏が終わった。(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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