注目打者が11打席無安打「プレッシャー」 揃えた多数の木製バット…届いた父の願い
Full-Count / 2024年8月19日 16時31分
■選抜では打率4割超えも…夏の甲子園では2試合無安打だった吉川
待望の初安打に、感情があふれだした。第106回全国高校野球選手権大会に出場した青森山田は、19日の準々決勝で滋賀学園を破って4強進出を決めた。吉川勇大内野手(3年)が今大会初安打となる適時打を放ち、これが決勝点になった。アルプスで見つめた父の表情も、ようやく和らいだ。
0-0の7回、犠打などで2死三塁で打席に入った吉川は、左翼手の前にはじき返し、先制点を奪った。今大会12打席目でようやく出たヒットに、一塁では感情が爆発。「とにかくうれしかったです」。両腕でガッツポーズした。
今春の選抜では、木製バットを使って打率.417をマーク。U-18の日本代表候補にも選ばれた好打者で、青森大会では全試合で安打を放つなど打率.444を記録した。
「また甲子園でヒットを打ちたい、ホームランを打ちたい」
青森大会が終わった後、吉川は父の永利(ながとし)さんに話していた。しかし、甲子園ではスタメン出場野手の中では唯一の2試合無安打。木製バットの重さを変えるなど、試行錯誤しながらも結果が出なかった。
■待望の初安打「本人も私以上にプレッシャーだったと思います」
永利さんは、「一生懸命プレーしてもらうことが大事ですから」と、金属よりもコストのかかる木製バットを使用する息子をサポート。選抜時に揃えた10本に加え、夏の甲子園までにもさらに10本は使ってきたという。
準々決勝も、2打席を終えてヒットは出ていなかった。遊撃の守備で軽快にゲッツーを奪う息子を見ながら、永利さんは「まずはなんとか1本ね。幸いチームは勝っていますし、野球って攻撃だけじゃないですからね、守備とかほかのことで頑張ってほしい」と優しい表情で語っていた。
その直後だった。待望の1本が飛び出し、一塁アルプスは大盛り上がり。ここまで無安打とわかっていた周りの父兄も大喜びで、永利さんとハイタッチした。「まず1本出てくれて本当によかったですね。本人も私以上にプレッシャーだったと思います」。ようやく心から笑うことができた。
兜森崇朗監督も「本人が非常にプレッシャーを感じていましたので思い切って振ってくれと言って出た一打でした」と喜んだ。チームが目標とする全国制覇へ、頼もしい男が目覚めた。(上野明洸 / Akihiro Ueno)
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