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投球動作で「肘上げなさい」指導のリスク 簡単動作で理解…“腕が挙上しない”根本原因

Full-Count / 2024年8月23日 7時50分

投球動作で腕・肘の動きだけを指摘するリスクとは(写真はイメージ)

■投球動作指導の野球塾運営…伊藤聡希氏「腕の意識だけで腕が上がることはない」

 小・中学生への投球指導でよく言われるのが、テークバックの際に「肘をもっと上げなさい」という指導だ。故障につながるというのが理由だが、“なぜ肘が下がってしまうのか”という根本に焦点を当てなければ、逆に動作に無理が生じる危険性がある。大阪・豊中、堺を中心に、小学生からプロまでマンツーマンで投球指導を行う野球塾「PPA(ピッチングパフォーマンスアカデミー)」を運営する伊藤聡希さんは、「目に見える表面的な部分だけの指摘では、解決につながりません」と語る。

「しょうくん」のハンドルネームで活動する伊藤さん運営の「PPA」は、伊藤さんを含めた10人の指導者全員が医療国家資格を保有しているのが特徴だ。悩みを抱える小・中学生や保護者の話を聞き、フィジカルチェックや施術、トレーニング指導を行い、動画撮影と球速測定によって“ビフォア&アフター”を示すことで変化を実感してもらう。LINEでのフィードバックを行うなどきめ細やかな対応が好評を得て、現在は豊中、堺、京都、神戸、姫路と拠点を広げ、伊藤さんのSNSフォロワー数も5万を超える。

 投球動作において、目に見える改善点を伝えるのは決して間違ったことではない。しかし、「それはあくまで表面的な部分。『肘を上げろ』と言ったところで、腕の意識だけでは腕は上がりません」と伊藤さん。そして、わかりやすい例を示す。


普段から猫背だと腕を真上に上げることができない【写真:高橋幸司】

「正座をした状態から、両腕を上に上げてみてください。骨盤が後傾し、背中が丸まった体勢だと、腕は斜め上までしか上げられません。逆に骨盤を立てて、背筋を伸ばした状態から上げると、肩甲骨周りが動いて、自然に真っすぐに、両腕を上に上げられるはずです」

 投球時も同様に、肘が下がってしまう選手は、普段から猫背のために肩甲骨が働かず、腕が上がらない状態になっている可能性がある。逆に、適度に骨盤が立つ姿勢を維持できれば、腰椎・胸椎が伸展して肩周りも動かしやすくなり、自然に腕が上がるし、肘も下がることはない、ということになる。


「しょうくん」のハンドルネームで活動する伊藤聡希氏【写真:高橋幸司】

■根本からの動作改善が、故障予防とパフォーマンス向上につながる

 つまり、テークバックの修正は腕の動きだけを指摘すれば直るものではなく、肩周りの動き、さらには下半身との連動など、トータルで見直さなければいけない。骨盤周りの筋肉が弱かったり、柔軟性が足りなかったりすれば、必然的に、適切なフォームを維持するためのケアやトレーニングが必要になる。

 伊藤さんが運営する「PPA」では、理学療法士などの資格を持つトレーナー陣が、そうした投球動作の根本となるフィジカル要素から改善点を見いだし、選手個々に合わせた指導を行っているという。

「一時的に良くなっても1週間で元に戻ってしまったら意味がありません。再現性を高めるために、大もとからどう改善するかを重視しています。それが、怪我予防にもパフォーマンスアップにもつながっていきます。小学校低学年の子には楽しみながらできるように教えるなど、年齢によってアプローチを変えています」

 伊藤さん自身は、小学校から高校まで野球をし、中高では投手を務めた。しかし、中学時代は肩肘の故障に悩み、高校では監督から一時、オーバーハンドから下手投げ転向を命じられるほどの不振に陥った。チームメートの言葉をきっかけに立ち直り、高3に上がる直前にようやく球速アップのコツをつかんだが、「周りに頼れず、自分でやらなければいけないと思いすぎていました。他の人の意見を聞くと『そんな考え方もあるのか』と、新しい発見があることに気づきました」。

 大学では猛勉強で理学療法士の資格を取り、2021年4月にPPAを創設。教えている小・中学生には自分のように遠回りすることのないよう、正しい体の使い方やマインドを伝えていきたいと望んでいる。(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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