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大谷翔平は「まるでモデル」 ド軍を撮り続けて40年…専属カメラマンが絶賛するワケ

Full-Count / 2024年9月13日 7時10分

ドジャース・大谷翔平【写真:小林靖】

■1985年からチームの名場面を撮影してきたジョン・スーフーさん

 1883年にニューヨークのブルックリンで創設されたドジャースは、1958年にロサンゼルスへ本拠地を移し、今年で67年目となる。1985年から40年間にわたり、球団がロサンゼルスで紡ぐ歴史の半分以上を写真に収めてきたのが、球団専属カメラマンのジョン・スーフーさんだ。

 生まれも育ちもロサンゼルス。ドジャースタジアムから5キロ圏内で幼少期を過ごした。小学生だった1973年、一塁手だったスティーブ・ガービーに憧れ、外野のブリーチャー席から声援を送った。翌年にガービーがシーズンMVPに輝いたことは昨日のことのように覚えている。だが、当時のジョン少年はまだ、将来自分がドジャースタジアムを“職場”とするとは知る由もない。

 スポーツの写真を撮り始めたのは大学に入ってから。スポーツ強豪校としても知られる南カリフォルニア大(USC)で大学新聞「デイリー・トロジャン」編集部に加わった。フィルムの現像作業から始まり、写真に興味を持つと、貯金をして機材を揃え、アメリカンフットボールやバスケットボールなど大学スポーツの撮影をスタート。時折、クリッパーズやレイカーズなどNBAの撮影に出掛けるようになり、そこでNBA殿堂入りも果たした名カメラマンのアンドリュー・バーンスタイン氏から撮影のイロハを学んだ。

「ドジャースと契約を結んでいたバーンスタインさんが、僕を助手として撮影現場に連れていってくれたんだ。その流れで1985年からドジャースの写真を撮るようになった。最初はアルバイトのような立場だったから、ここまでアッという間だったわけではなく、とても濃密な時間だったと思う」

 大学で専攻していたのは「老年学」。老いについて身体的、心理的、社会的側面から考える学問で「スポーツフォトグラフィーとはまったく関係のない勉強をしていたんだ」と笑う。スポーツカメラマンを目指していたわけでもなく、「自然の流れでここまでたどり着いた」と記録と記憶に残るドジャースの名場面を撮り続けているのだから、人生どう転ぶかわからない。


ドジャース球団専属カメラマンのジョン・スーフーさん【写真:松本洸】

■印象深い日本人は「ナカムラ」、一番のお気に入りは「ユウ・ダルビッシュ」

 ドジャースを撮り続けて40年。「自分にはドジャーブルーの血が流れている」と言った名将のトミー・ラソーダ、メキシコの英雄とも呼ばれる左腕フェルナンド・バレンズエラ、1988年ワールドシリーズ第1戦で劇的本塁打を放ったカーク・ギブソン、現在は解説者として知られるサイ・ヤング賞右腕の“ブルドッグ”オーレル・ハーシュハイザー、トルネード投法で沸かせた野茂英雄ら、数々の名選手の姿をフィルムに焼き付けてきた。それぞれに思い入れがあり、どれが一番とは選びづらいが、「2020年のワールドシリーズは特別だった」と話す。

 全世界が新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされた2020年。メジャーではシーズンが大幅に短縮されての開催となった。この年、ナ・リーグ西地区で優勝したドジャースはポストシーズンを勝ち進み、レイズとワールドシリーズで対戦。4勝2敗でシリーズを制し、1988年以来32年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たした。

 感染症対策として「バブル」と呼ばれる厳重に管理された環境の中で掴んだ世界一。「毎日PCR検査を受けたり、行動が制限されたり、本当に大変だったけれど、その価値は十分にある優勝だった」。未曾有の出来事に不安を抱えながらも、チームが一丸となって乗り越え、掴んだ栄冠は格別な輝きを放っていた。

 ドジャースと言えば、1995年に野茂氏が入団して以来、日本人にはなじみ深いチームでもある。今季加入した大谷翔平選手と山本由伸投手を加えると、11人の日本人選手が所属した。中でも印象深いのは「ブロンドヘアでやってきたナカムラ(中村紀洋)だ。当時、三塁はベルトレがいたり、いいラインナップが揃っていたりで出場機会がなかったのは残念だったけど」とジョンさん。一番のお気に入りは、所属したのは約3か月だった「ユウ・ダルビッシュ」だと絶賛する。

「在籍した時間こそ短いけれど、彼はとにかく人がいい。互いに深く知ることができた。野球での活躍も大切だけど、人と人としてどう接することができるか。僕だって人間だから。誰もが敬意を持って接してくれた中でも、彼はとてもフレンドリーで、いい男だ」

■大谷はまるで「GQに出てくるモデル」と絶賛

 同じシーズンは2度とないが、今季もまた特別な瞬間をカメラで捉え続けている。その中心となっているのが、前人未踏の“50本塁打-50盗塁”という偉業を射程内に捉えた大谷だ。ベテランカメラマンは、撮影対象として大谷をどう見るのか。そう質問すると、間髪入れずに「彼は最高、ベストだよ」の答えが返ってきた。

「彼は撮影するのが本当に楽だし、まるでモデルのよう。ファッション誌『GQ』に出てくるモデルでもおかしくない被写体だから、あれだけ多くのスポンサー契約が結べるのも納得だ。絵になる存在だ。試合では彼の打席が回ってくるのが楽しみで仕方ない。何かが起きる可能性が、誰よりも高いからね」

 何かをやってくれるに違いない――。そう思いながらファインダーを覗く一方、世間の大谷に対する期待の高さには“ファミリー”の一員として一言物申したくなってしまう。

「僕にとってドジャースはファミリー。表舞台でスポットライトを浴びる姿だけではなく、舞台裏の苦悩や努力も見ている。結婚式を撮影したり、子どもたちの成長を撮影したり、選手たちの人生そのものと接しているから。自分はメディアではなく、ファミリーの一員だと思っている。

 だから、ファンや世間がどれだけ高い期待を寄せようが、自分には関係ない。選手だって人間だ。僕はこの40年間、高い期待が寄せられる選手をたくさん見てきたが、うまくいかないこともある。ワールドシリーズに勝つのは大変なこと。ショウヘイはまだプレーオフに出た経験すらないんだ。プレーオフがどんな舞台かも分からない選手に、ワールドシリーズ優勝を託すのはかなりの難題。世間は現実を見ずに期待ばかりふくらませるが、選手も人間だから」

 ジョンさんにとって、ドジャースを撮影することは特別なことではなく「人生の何気ない一コマ」だという。そして、選手の日常を写真として切り取り、残し続けることが「チームカメラマンの仕事」と話す。

 シーズンはいよいよ最終盤。現実味を帯びてきた大谷の50-50達成や、2020年以来となるワールドシリーズ制覇の可能性が色濃くなる中でも、ジョンさんはいつもと変わらずシャッターを切り続ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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