DeNA退団→ロッテで躍動する35歳 新天地で止まらぬ打棒…リーグトップの.690
Full-Count / 2024年10月2日 19時4分
■4年ぶりリーグ制覇…際立った鷹先発陣の安定感
9月に最もチームに貢献した選手をデータで探り出し、セイバーメトリクスの指標でパ・リーグ「月間MVP」を選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。ただ、打点や勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。
そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。公式の月間MVPは9月以降、レギュラーシーズン終了時までの成績で評価するが、今回は9月1日から30日までの成績で評価する。9月のパ・リーグ月間成績を振り返る。
〇ソフトバンク:15勝8敗
得点率4.52、打率.281、OPS.765、本塁打16
失点率2.49、先発防御率1.99、QS率60.9%、救援防御率3.12
〇日本ハム:12勝9敗
得点率3.71、打率.234、OPS.669、本塁打22
失点率3.66、先発防御率2.94、QS率57.1%、救援防御率4.63
〇ロッテ:10勝10敗
得点率3.50、打率.245、OPS.673、本塁打14
失点率3.52、先発防御率2.89、QS率50.0%、救援防御率3.62
〇西武:11勝12敗
得点率3.26、打率.240、OPS.664、本塁打12
失点率3.03、先発防御率2.44、QS率52.2%、救援防御率 2.20
〇楽天:10勝12敗
得点率3.52、打率.247、OPS.659、本塁打11
失点率 4.39、先発防御率3.83、QS率61.9%、救援防御率4.80
〇オリックス:8勝15敗
得点率2.59、打率.243、OPS.644、本塁打14
失点率4.05、先発防御率3.28、QS率54.5%、救援防御率3.82
4年ぶりリーグ優勝を果たしたソフトバンクは、9月も安定した戦いぶりだった。先発投手の防御率が1点台で、先制率も69.6%にのぼった。優位な試合展開に持ち込めたのが好調だった要因と言えよう。6年ぶり2位を決めた日本ハムも勝ち越した。特にソフトバンクに対して終盤の7連勝で対戦成績を五分(12勝12敗1分け)に持ち込んだことでクライマックスシリーズでの戦いに注目が集まる。
■ロッテのソトはリーグ1位の月間打率.338、長打率.609
セイバーメトリクス指標による9月の打者月間MVP選出を試みる。打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。上位ランキングは以下の通りとなった
〇ネフタリ・ソト(ロッテ):wRAA10.13、82打席、OPS1.117、打率.338、本塁打7
〇フランミル・レイエス(日本ハム):wRAA9.11、89打席、OPS1.050、打率.309、本塁打9
〇近藤健介(ソフトバンク):wRAA7.34、52打席、OPS1.133、打率.378、本塁打1
〇浅村栄斗(楽天):wRAA6.97、92打席、OPS.875、打率.307、本塁打3
上記ランキングに掲載されていないチームのwRAA上位選手は以下の通り。
〇佐藤龍世(西武):wRAA4.82、92打席、OPS.791、打率.253、本塁打3
〇レアンドロ・セデーニョ(オリックス):wRAA3.80、43打席、OPS1.009、打率.317、本塁打4
8月から日本ハム打線を牽引してきたレイエスが好調をキープ。2位躍進の原動力となった。それ以上に好調だったのが昨季限りでDeNAを退団して、ロッテに加入した35歳のソト。打率.338はリーグ1位、7本塁打はレイエスの9本に及ばなかったが、長打率.690はリーグ1位。長打で打線を牽引したソトをセイバー指標で選ぶ9月の月間MVPに推薦する。
■オリ山下は奪三振率12.86、奪空振り率「Whiff%」は36.4%
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。上位ランキングは以下の通りとなった
〇山下舜平大(オリックス):RSAA7.20、登板4、イニング28、防御率1.61、WHIP0.86、奪三振率12.86、与四球率1.93、被本塁打1、QS率100%、HQS率50%
〇伊藤大海(日本ハム):RSAA6.95、登板4、イニング34、防御率1.06、WHIP0.97、奪三振率9.00、与四球率1.59、被本塁打0、QS率100%、HQS率75%
〇宮城大弥(オリックス):RSAA5.15、登板4、イニング31回2/3、防御率1.14、WHIP1.07、奪三振率10.80、与四球率1.99、被本塁打1、QS率100%、HQS率75%
〇佐々木朗希(ロッテ):RSAA4.35、登板3、イニング18、防御率3.50、WHIP1.17、奪三振率10.50、与四球率2.50、被本塁打0、QS率67%、HQS率33%
〇杉山一樹(ソフトバンク):RSAA3.65、登板11、イニング11、防御率0.82、WHIP0.55、奪三振率10.64、与四球率3.27、被本塁打0
上記のランキングに掲載されていないチームのRSAA上位の選手は以下の通りである。
〇隅田知一郎(西武):RSAA3.45、登板4、イニング29、防御率2.79、WHIP1.00、奪三振率9.31、与四球率1.24、QS率75%、HQS率75%
〇鈴木翔天(楽天):RSAA1.68、登板5、イニング4回1/3、防御率6.23、WHIP1.15、奪三振率14.54、与四球率4.15、被本塁打0
公式の月間MVP最有力候補と言えるのが伊藤だろう。月間4勝で防御率も1点台。2完封を含む3完封と、申し分のない投球で2位躍進の原動力となったと言えよう。しかし、伊藤以上の投球を披露したのが、昨年の新人王である22歳の山下だ。
先発ながら奪三振率は12.86。その要因は奪空振り率「Whiff%」で、36.4%だった。打たれた打球の52%はゴロで相手に満足なバッティングをさせなかった証左である。オリックスは9月に低迷したが、その中でもチームに貢献してきた山下をセイバー指標で選ぶ9月の月間MVPに推薦する。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。
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