気温40度超でも“熱中症なし” 対戦相手も驚き…小学生の強い体作る「野球以上の時間」
Full-Count / 2024年10月11日 7時5分
■練習中に休息兼ねて5回補食…小学生軟式野球「田沼アスレチックBBC」の“食トレ”効果
近年の温暖化により、夏場の練習にも気を配ることが増えている。栃木県佐野市でも今夏は、国内過去最高に迫る気温41.0度を記録するなど猛烈な暑さに見舞われた。それでも、同市の小学生軟式野球チーム「田沼アスレチックベースボールクラブ(BBC)」では、“野球する以上に長い(?)”時間をとることで、怪我なく、暑さを乗り越えられる強い体づくりができているという。クラブ代表の金井田貴さん、厚子さん夫妻に、その長い時間=補食の時間による“食トレ効果”について話を聞いた。
田沼アスレチックBBCには現在、54人の選手が所属。「全日本学童大会マクドナルド・トーナメント」県予選では2年連続準優勝と全国の舞台にも迫っているが、「食べることも練習の一環」と、2014年の創設時から力を入れているのが補食だ。「体づくりのためには何を食べればいいのか、少しでも知識を持って中学・高校に行ってもらおうと、小学生の頭が柔らかいうちから意識づけさせています」と貴さんは語る。
チームは平日の水曜夜と週末に活動し、土日の練習は朝8時から夕方4時まで。その間、なんと5回も補食をとる。練習直後にもリカバリーのために食べる。「保護者の皆さんにも、『野球をするよりも食べに来ているみたい』と言われます」と笑う厚子さん。遠征先に出かけても、到着すぐに“もぐもぐタイム”に入るため、対戦チームには驚かれるそうだ。
簡単なものを各家庭で用意し、時間になるとクーラーボックスから選手たち自身で取り出す。小さく握ったおにぎりやバナナなどの糖質類、スイカ、ミニトマトなどのフルーツ・野菜などが定番で、暑い季節は体を冷やして塩分も取れる塩きゅうりが人気。逆に寒い冬場は温かいスープなどを持参してくる。
「同じ糖質でもデニッシュパンは油分が多いので運動に合うのかな? カップラーメンはご褒美としてはいいけれど、大谷翔平選手みたいになりたいなら必要ないよね? などと話をしますね」と、アスリートフードマイスターの資格を持つ厚子さんはアドバイス。子どもたち同士で「ミニカステラがいい」などと情報交換することもあるという。
田沼アスレチックBBCの練習の様子【写真:チーム提供】
■「体重40キロを超えれば外野を越すよ」…食事への意欲を高めるアドバイスも
もはや、どんぶり飯を無理やり詰め込む時代ではない。一度に一気に食べるのではなく、細かく分けることで胃腸に負担なく、食が細い子でも無理なく栄養を取れる。また、コンビニ食が一般的になった中でも、どんなものを購入すれば体づくりに適しているのか、早いうちから知識を植え付けられる。
もちろん、食べて体を大きくすることはパフォーマンスアップに結びつく。「朝食べれば試合中のスタミナ切れもなくなるよ」「体重が40キロを超えてくれば、打球が外野の頭を越すようになるよ」などと助言すれば、子どもたちの食への意欲も高まる。
食事は保護者とのコミュニケーションツールにもなる。「『お母さんの味を教え込むチャンス。できる範囲で作ってあげてください』と話もしますし、『学校から帰ってきて、お菓子を食べることがなくなりました』という喜びの声も聞かれます」と厚子さん。母親の野球への理解は子どもたちのやる気にも関わるため、チーム運営の重要ポイントだという。
効果はテキメンだ。「おかげさまで怪我をする子も、体調を崩す子も少ない。野球をやっている以上は子どもでも立派なアスリートですから」と厚子さん。貴さんも、「長時間練習で疲れているチームもありますが、補食をこまめにとることで適度な休憩にもなり、怪我防止にも、夏場は熱中症予防にもなる。理にかなっています」と強調する。
また、田沼アスレチックBBCでは、創設時から球数や継投に気を使い、肩肘検診も毎年実施。できるだけ多くの子に投手を経験させつつ、緩急で打ち取ることを意識させる。「いずれ体が大きくなれば、強い球は自然に投げられる。投手を経験することで、守備のときのマウンドへの声かけも変わってきます」と貴さんは選手たちの先を見越す。
だからこそ、“小学生の甲子園”にあと1歩に迫りながら、勝ちにはこだわりすぎない。「学童期はまず野球の楽しさを知ってもらうことが大事。『もっとやりたいな』くらいで、次のステージに送り出してあげられればいい」(貴さん)。好きでい続けてもらうためにも、お腹いっぱいより、まずは腹八分目から。野球界の底上げには、技術を教える以外にもできることがある。(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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