監督歴30年の確信「8割は打撃」 小学生名門が実践、“手首こねない”打ち方指導
Full-Count / 2024年10月10日 7時50分
■全国スポ少交流優勝3回、福島・小名浜少年野球教室が目指す「バッティングのチーム」
チームのストロングポイントは何か。運営方法や戦略は、各チームによって異なる。全日本学童軟式野球大会の出場は10回を数え、全国スポーツ少年団軟式野球交流大会では1995年からの2連覇を含めて3回優勝と、福島県いわき市の「小名浜少年野球教室」は全国でも名を馳せている。Full-Countでは小学生・中学生世代で日本一の経験を持つ監督に取材。1994年からチームを率いる小和口有久監督が一貫して目指すのは攻撃力を磨いたチームだ。
2024年を迎え、小和口監督は監督歴30年となった。教え子には小松聖(オリックススカウト)、西巻賢二(DeNA)、古長拓(元オリックス)などがいるのだが、ベテラン監督は子どもたちの顔を思い浮かべて言う。
「子どもというのは、やっぱり守備よりも打撃のほうが好きなんですよね。だから、練習でも自然と打つほうが多くなる」
矢田川グラウンドで行われる平日練習は火、水、木曜日の午後5時~8時頃まで。その多くの時間を打撃練習に費やす。「8割ぐらいは打撃かな」。ティーバッティングでスイング力を磨き、保護者の手助けを受けながら行うシートバッティングでは実戦感覚を養う。朝9時から始まり、たっぷりと打ち込める週末の練習では、ロングティーも取り入れながら、遠くへ飛ばす「楽しさ」も味わう。小和口監督の言葉だ。
「子どもたちへのアドバイスとしては、右打者なら左の腰をボールにぶつける感覚で踏み出し、センターへバットを放り投げるように振ること。また、右打者ならセカンドの頭を、左打者ならショートの頭を狙って打つように教えていますね」
小名浜少年野球教室の小和口有久監督【写真:編集部】
■バントやヒットエンドラン…トータル的な攻撃力で勝負する
子どもたちには一貫して「とにかく振れ!」と語りかける。
「中学、高校へ行ったときに、しっかりとバットが振れる選手になってほしいという思いで伝えています。そのためにも『後ろを小さく、前を大きく』という意識も持たせていますね。あとは、センターを中心に打てるように」
ボールへのコンタクトを磨くために、子どもたち自らがノックをすることも。外野にカゴを置き、その的をめがけて打つ。
「うまくできる子は少ないですよ。手首が返ってしまい、俗に言う『こねる』打ち方になってしまう。だから、そこでもセンター方向にバットを放り投げる意識が大切。こねずに、センター方向に打てるようになれば、中学、高校でも確かなスイングができると思います」
打撃技術を上げることは、勝利を手繰り寄せる一手。その一方で、子どもたちの将来を見つめた指導が小名浜少年野球教室にはある。
鍛え上げられた打力を持ち合わせたチームは「打撃の小名浜」と呼ばれることが多い。ただ、小和口監督が目指すのは、総合的な攻撃の力強さだ。
「小名浜はバントもうまいんですよ(笑)。セーフティースクイズの練習では、ストライクゾーンのボールをサード側、あるいはファースト側を狙ってバント。いろんなものを絡めて点を取るのが小名浜のパターンです」
強豪チームを相手にセーフティースクイズを連発して勝利をもぎ取った試合もあった。「打つ」だけではない。状況に応じた緻密な攻撃もまた、小名浜少年野球教室の強みと言える。「打撃が良くなると守備も良くなるんですよ」と言い、これからも攻撃力を軸にチームを率いていきたいという小和口監督は、今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定だ。(佐々木亨 / Toru Sasaki)
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