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育成5年目が逃した“1枠” 揶揄された「助っ人に負けた男」…23歳が震える戦力外期間

Full-Count / 2024年10月18日 8時10分

ソフトバンク・勝連大稀【写真:竹村岳】

■ソフトバンクの勝連 同期の戦力外に「他人事じゃない」

“戦友”がまた1人、チームを去ることになった。10月7日、ソフトバンクは9選手に対して来季の選手契約を結ばない旨を通達した。そのうちの1人、育成5年目だった伊藤大将内野手の戦力外通告に「他人事じゃない」とこぼしたのは勝連(かつれん)大稀内野手だ。2019年の育成ドラフトで伊藤は3位、勝連は4位で入団。ともに高卒同期の内野手としてしのぎを削ってきた。

「同期として伊藤はずっと一緒にやってきたので。でも、寂しいとかっていう感情はあんまりなくて……。そういう世界なのかなって思いますし、自分も(戦力外通告)期間が終わらない限り、まだ可能性はあるので。そんなに他人事ではないし、自分もあるのかなって思います」。勝連は静かに現実を見つめている。

 強い覚悟を胸に秘める一方で、焦る様子はない。「戦力外になるかもしれないと怖がってプレーするよりは、前向きに考えてプレーしようかなと思っていて。ここで野球が終わるわけじゃないですし。これはいろんな方から言われるんですけど、『ここが全てじゃない』って。モチベーションを保つのがこの時期は難しいと言われるし、『難しいやろうけど頑張れ』と言われるので。気持ちを落とさずに頑張っていこうかな」。真っ直ぐに目の前の野球と向き合っている。

 勝連に優しい声をかけてくれるのは、主にコーチ陣だという。笹川隆4軍内野守備走塁コーチ、金子圭輔3軍内野守備走塁コーチ、高田知季2軍内野守備走塁コーチの名前を挙げた23歳。各軍の首脳陣が気にかけてくれるのは、日頃からの勝連のひたむきな姿を認めているからこそ。「それはもう嬉しいです」と笑みを浮かべる。笹川コーチには「モチベーション(を保つのは)、俺だったら無理だな」と言われたという。それほど難しい状況ではあるが、普段と変わらずに野球に取り組んでいる。

■5年間の中でも「一番ショックが大きかった1年」

 5年間の中でも今年が最も「ショックが大きかった」と言うのは、目標にあと1歩届かなかったから。去年は二遊間の選手に怪我人が相次いだソフトバンク。そんなチーム状況で、当時の小久保裕紀2軍監督の下で安定感のある守りを見せ、重宝されたのが勝連と伊藤だった。持ち味の守備力はもちろん、このチャンスを逃してたまるかと言わんばかりに、2人は打撃でもしぶとく食らいついた。小久保監督も度々、「かっちゃんと大将」と名前を挙げて評価していた。

 勝連自身も当時を振り返って、「去年は小久保監督にも評価してもらっているのを記事とかで見て、これはいけるかなと思った」と、信じて突き進んだ。支配下登録は叶わなかったが、大きな手応えを感じられるシーズンだった。そして今シーズン。さらに自信が増し、2軍でアピールを続ける日々を送っていた。しかし、7月末にソフトバンクが支配下登録したのは投手3人、捕手1人の計4人だった。

 残った支配下枠はわずか「1」。勝連も最後まで望みは捨てていなかった。ところが、「最後の1枠は内野手っていう噂が入ってきて、それと同時に外国人の調査も進んでいるみたいな話も聞こえてきた。『外国人獲られたら無理やん』と思っていたら、ダウンズが決まって……」。7月30日にジーター・ダウンズ内野手の獲得が球団から発表された。

「今年はいける(支配下登録を勝ち取れる)だろうというか、去年よりはいける確率が高いなと感じていた分、何が足りなかったのかなって。ちょっとショックが大きかったっすね」と勝連の中でも「届きそうで届かなかった」からこそダメージは大きかった。

■戦力外の可能性も変わらない姿勢…「なんくるないさ」の精神

 ダウンズの加入が決まった後、「みんなに『ダウンズに負けた男』ってイジられて」と笑う。一見、衝撃的なワードにも感じられるが、勝連の受けとめは違った。「自分はなんとも思わないですよ。変に気を遣われるよりは、逆に言ってくれた方が(いい)。みんなも、最後まで(1枠が)自分やと思ってくれていたってことが嬉しい。ダウンズじゃなかったら自分やと思ってくれてたことが1番嬉しいんで。『ダウンズに負けた男』って言われたらなんか嬉しかった。(ダウンズに)負けたのは悔しいですけど」。

 支配下登録期限が過ぎても、勝連の姿勢が変わることはない。「もう切り替えるしかないと思って。そこで引きずっていても、モチベーションの面でも、試合でのパフォーマンスの面でも悪い方向に行くと思ったんで」。誰が見てくれているか分からない。気持ちを落とすことなく、今も野球と向き合い続けている。

 先の心配をして野球をするよりは、楽しく今を生きたい――。「そこはもう、あまり怖がらずに。なるようになるんで。この先もそれこそ『なんくるないさー』って感じですね。それでいきたいなと思ってます」と、“うちなんちゅ”は前を向く。

 なかなか報われない5年間だったが、勝連は「(育成で)5年も見てもらって、今年から4軍制度ができた中でも2軍にいさせてもらった。その面ではチャンスっていうか、やっぱり守備が評価されている分、(試合で)使ってもらえていることも多いので。2軍にもいけない野手もいる厳しい環境の中で、自分は2軍でやらせてもらってるので、そこはもう感謝しています」と明かした。

「やるしかないので。頑張っていれば、なにかあるかな。誰か見てくれているかなと思って、それを信じてやっていきたいっすね」。勝連の優しい瞳の奥には決意が滲んだ。23歳の覚悟が報われることを信じている。(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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