選手が監督“突き飛ばし”の事件「まずいぞ」 Vで歓喜も…肝を冷やした瞬間
Full-Count / 2024年11月1日 6時50分
■1996年にリーグ連覇…星野伸之氏は仰木監督を突き飛ばしてグラウンドへ
パ・リーグ連覇決定試合で、まさかの……。遅球で知られた176勝左腕・星野伸之氏(野球評論家)は、オリックスが2年連続優勝を成し遂げた1996年シーズンで13勝5敗の好成績を残した。9月23日の日本ハム戦(GS神戸)で延長10回、イチロー外野手のサヨナラ二塁打で決まった優勝の瞬間はよく覚えているという。大歓喜でグラウンドに飛び出す時に、とんでもないことをしでかしてしまったのだ。
1996年のオリックスは日本ハムと優勝争いを展開。8月中旬からスパートをかけて9月に突き放してリーグ連覇を果たした。本拠地のGS神戸で決めた。キャッチフレーズは「DREAM TOGETHER~がんばろう神戸~」。1995年1月17日の阪神・淡路大震災から1年が経過したが、被災地はまだまだ厳しい状況だった。1年前のリーグ優勝は本拠地でできなかったが、今年こそは神戸で喜びたい。誰もがそんな思いで勝ち星を重ねた結果でもあった。
優勝が決まった9月23日の日本ハム戦。星野氏は球場ロッカーで待機していた。その2日前の9月21日の日本ハム戦(GS神戸)に先発し、6回2/3を1失点で13勝目をマークしており“上がり”で戦況を見つめていた。試合は9回表終了時点で5-6。「9回裏も2アウトになって今日は駄目かなって思っていたら代打のD・J(ダグ・ジェニングス外野手)がホームラン。僕はそこからユニホームに着替えて、下(のグラウンドレベル)に降りていったんです」という。
6-6の延長10回無死一塁でイチローが放った打球は左翼線へ。日本ハムのロブ・デューシー左翼手がクッションボール処理に手間取っている間に、一塁走者の大島公一内野手が一気にホームへ還ってきた。劇的サヨナラ勝ちで優勝を決めると、ナインが一斉にグラウンドへ飛び出した。誰もが最高の笑顔で喜んだ。仰木監督の胴上げが始まった。マジシャン指揮官は5回宙を舞った。
星野氏はこの優勝決定の瞬間にとんでもないことをしていた。「大島がホームに還ってくると同時に僕もグラウンドに飛び出したんですけど、その時に仰木監督を突き飛ばして行っていたそうなんですよ。後ろで見ていた人たちから、あとで言われました。『お前、あれはまずいぞ』って。通路のところに監督が立っていたのはわかっていたんですけど、決まった時はもう興奮しているから……。大島しか見ていなかったし……」。
元オリックス・星野伸之氏【写真:山口真司】
■1996年日本Sは第1戦先発…指揮官から「星野はどこで投げたい?」
喜び勇んで、我先にと急いで駆け出したのだろうが、まさか仰木監督を突き飛ばしていたとは、星野氏は思ってもいなかった。「聞いた時は『マジすか』でしたよ」。まさに冷や汗ものだったが、仰木監督からは何も言われなかったそうだ。「監督は(胴上げのために)後からゆっくり(グラウンドに)出てきましたからね。ただ、僕に突き飛ばされたのはきっと監督は覚えているんだろうなって思いますけどね」と苦笑しきりだ。
勢いあまってのこととはいえ、仰木監督にそんなことをしたオリックス選手はさすがに他にはいなかっただろう。優勝決定とともに何とも“衝撃的”な出来事だったが、その後、日本シリーズ前の練習期間中のグラウンドで星野氏は仰木監督に話しかけられたという。「急に、監督から『星野は(日本シリーズで)どこで投げたい』って聞かれたんです。監督室とかに呼ばれたわけではなく、普通の会話の中でね」。
星野氏は即答しなかった。「『僕が決められるんですか』みたいなことを言って『ちょっと待ってもらえますか』ってね。『えーっ、待つのぉ』と言われましたけどね」。前年(1995年)のヤクルトとの日本シリーズで第3戦に先発だったことも振り返りながら星野氏は考えた。「これは1戦目ってことなんだろうなと思い、15分くらいしてから監督に『初戦で行かせてください』と言いました。監督は『うん、わかった』って。その答えを待っていた感じでしたね」。
オリックスは巨人との日本シリーズを4勝1敗で制して日本一になった。星野氏は第1戦(10月19日、東京ドーム)と第5戦(10月24日、GS神戸)に先発し、好投して勝利につなげた。「たぶん監督は僕がすぐ“1戦目”って言うと思って聞いたんでしょうね。それも操作というか、そこも仰木マジックでしょう」。1996年のリーグ優勝&日本一は星野氏にとって特別な最高の思い出だ。歓喜のあまり仰木監督を突き飛ばしてしまい申し訳なく思ったことも含めて……。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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