小学生チームを「完全学年別」にする利点とは? 縦関係希薄も…控えに現れる“兆し”
Full-Count / 2024年11月8日 7時50分
■今夏の全日本学童野球大会初出場…埼玉・山野ガッツ「小学生はステップアップの段階」
少子化の時代に88人の部員数を抱え、完全学年別で大会に出場するマンモス学童野球チームが埼玉県越谷市にある。山野(さんや)ガッツは今夏、創部54年目にして“小学生の甲子園”と呼ばれる「高円宮杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に初出場。全国の強豪が集まる大会で1勝を挙げ、続く2回戦では連覇を狙う新家スターズ(大阪)をあと一歩まで追い詰めた。同学年のみで活動を続けるユニークなチーム運営は、どのように生まれたのだろうか。
2008(平成20)年にニュータウンの「越谷レイクタウン」が街開きされて以降、部員数は増加の一途を辿った山野ガッツは、今では6、5、4、3年生と2年生以下の5チームを編成。それぞれが独自で練習や試合を行っている。
上級生チームの指導者に関しては、1人の監督が5年生→6年生と2年間指導し、再び5年生チームに降りるシステムで、2年かけて長期的に育成することができる。指導歴12年の鍋島匡太郎さんは、現在5年生のヘッドコーチとして、育ち盛りの子どもたちと向き合っている。
「以前は6年生、5年生のAチームと、4年生以下のBチームだけでした。そこから、冗談っぽく私たちは“レイクバブル”と呼んでいるんですけど、人数も増えてきて、試合に出られない子も出てきたので、5年ほど前から学年別で分かれてみようかと。やってみないとメリットはわからないので、まずは始めてみました」
完全学年別のシステムを導入後は、下の学年にどれだけ逸材がいても、チームの決め事として昇格させることはしない。同じ学年のみで活動を続けるので、人数は限定され、実戦経験も多く積める。レギュラーではなかった選手が、中学で地区の選抜チームに選ばれるなど、卒団後に芽を出すケースが増えたという。
「練習試合も1日に2試合組むので、必ず全員出します。なるべく早い段階で、より多くの経験を積めますし、どこで花が開くかもわかりません。小学生は、中学や高校に繋げるためのステップアップの段階だと思っています」
山野ガッツの鍋島匡太郎コーチ【写真:高橋幸司】
■全国出場の6年生とはタイプ異なる5年生…模索する“縦の繋がり”
学年によってチームカラーも異なる。全日本学童大会に出場した6年生チームは「10点取られたら11点を取り返す」をモットーに、強力打線を形成。県大会6試合で99得点、打率.429、20本塁打と打ちまくり、全国の舞台へと駆け上がった。一方で、5年生チームは「練習の8割は打撃練習」としながらも、守備力をしっかりと鍛えながら、接戦を勝ち抜くことを理想としている。
「その学年ごとに話し合って方針を決めているので、チームワークが生まれます。6年生は勝利にこだわっていますが、5年生はもちろん勝利を目指しますが、より経験も大切にしています。野球を好きになってもらうというのがスローガンですね」
今後は、保護者も含めて他学年同士が関わることのできるイベントの開催を模索中。チームを1つにするため、縦のつながりを生むアイデアを出し合っている。
「山野ガッツという名前ですけど、学年によって別の名前のようなチームというのは、メリットでもありデメリットでもあると思います。昨年は6年生と5年生で試合をやったりしましたが、いい経験だと思うし、今後もそういったことができればと思っています」
単に“バブル”に乗っただけではない。半世紀以上の歴史を持ちながら、伝統にとらわれず、柔軟な考えで時代に即した改革を推し進める。だからこそ、山野ガッツには部員が集まってくる。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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