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低反発バットで“スモール回帰”は「大間違い」 中学野球に帰還した名将のブレない育成術

Full-Count / 2024年11月12日 7時5分

中学硬式名門・枚方ボーイズに復帰した鍛治舎巧監督【写真:橋本健吾】

■県岐阜商を退任した鍛治舎巧監督は今年10月から名門・枚方ボーイズに復帰

 秀岳館(熊本)、県岐阜商(岐阜)を春夏計8度の甲子園に導いた鍛治舎巧監督が、中学硬式野球の大阪・枚方ボーイズの監督に復帰した。社会人や高校野球で結果を残してきた名将は、なぜ中学野球界に戻ってきたのか。名門復活への意欲、スモールベースボール回帰への懸念……、野球専門ウェブメディア「Full-Count」、野球育成解決サイト「First-Pitch」のインタビューに応じた。

 今夏に県岐阜商を退任した名将が選んだ次のステージは、中学野球への復帰だった。名門・枚方ボーイズは2014年春まで指揮を執った古巣。鍛治舎監督は「全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップ」で4度の優勝、12度の全国制覇を果たし一時代を築くと、その後は高校野球の世界でチーム再建を託された。

「私のなかで、やはり原点は中学野球なんです。今は野球人口の減少が問題視されている。一番底辺の層を増やしていかないと、この先はないと思っている。あと、ボーイズリーグは関東や東海が力をつけていますね。昔のように近畿のなかで目標にするチームをもう一度、作りたい。少年野球のフラッグシップになるようなチームを目指したい」

 鍛治舎監督が指揮を執っていた時代は、近畿勢がしのぎを削り全国大会でも好成績を収めていた。全国から注目を集める強豪が1つできると、周囲も「追いつけ、追い越せ」と活性化する。

「秀岳館では投手の継投と、打者は追い込まれてからのノーステップを徹底させた。すると、他校も取り入れるようになりましたね。勝つために、成長するために必要なものは共有すればいい。周りのレベルが上がれば野球界全体のプラスになる。そのスタイルはこれからも変わらない」と、ライバルたちにも門戸を広げ球界の底上げを続けている。


「スケールの大きい選手」育成を目指し中学生を指導する【写真:橋本健吾】

■スケールの大きい選手育成へ「指導者が可能性を狭めてしまってはダメ」

 高校野球では低反発バットが導入され、野球が変わるとも言われている。長打が激減し、地方大会や甲子園で勝ち切るために、“スモールベースボール”が再び流行の気配を見せている。だが、鍛治舎監督は「野球そのものが小さくなっていくのは大間違い」と断言する。

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)ではパワー野球を展開する世界の強豪相手に、真っ向勝負で挑み頂点に立った。メジャーリーガーの大谷翔平投手(ドジャース)や吉田正尚外野手(レッドソックス)以外にも岡本和真内野手(巨人)、村上宗隆内野手(ヤクルト)らの活躍も目立った。

 高校、大学、社会人、プロ野球と先を見据えた育成には、「小さくまとまる必要はない」と見ている。子どもたちに求めるものは「スケールの大きい選手を目指す」こと。投手のレベルが上がっているからこそ、打者は振り切る力がより必要になる。だからこそ「小・中学生の段階で指導者が可能性を狭めてしまってはダメ」と、口にする。

 今年で73歳を迎えたが、野球への情熱は冷めることはない。グラウンドでは身振り手振りで選手たちに指導を続けている。「体が動く限りは続けていく。全ては野球界への恩返し。皆が目標とするチームを作っていきたい」。中学硬式野球の勢力図は変わっていくのか――。野球の“原点”に帰還した、鍛治舎監督の育成に注目が集まる。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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