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15年連続プロ輩出…六大学名門は「野球だけで採らない」 二十歳でも伸びる子の“資質”

Full-Count / 2024年11月17日 7時50分

楽天に1位指名された明大・宗山塁【写真:加治屋友輝】

■今秋限りで勇退の明大・田中武宏監督…セールスマンとして磨いた”観察力”

 大学生になっても成長できる選手には、技術にとどまらない特徴がある。東京六大学野球秋季リーグは、明大と早大が首位タイのまま全日程を終え、12日に行われた優勝決定戦で早大が勝って通算48回目のリーグ優勝を果たした。敗れた明大の田中武宏監督は今季限りで退任。2022年春から3連覇の偉業を成し遂げた名将は、今年を含め15年連続でドラフト指名選手を輩出し、最長記録更新に貢献した“育成力”も抜きん出ていた。

 2020年春からチームの指揮を執ってきたが、それ以前も2011年から9年間コーチを務めていた。14年間にわたって明大選手を指導してきたわけだ。2010年にスタートした15年連続ドラフト指名選手輩出のほとんどにも携わった。今年も宗山塁内野手が楽天にドラフト1位、浅利太門投手が日本ハムに3位で指名された。

 田中監督は「とにかく手がかからなかった宗山の(大学通算)118安打も、手がかかるタイプだった高山(俊外野手=2015年ドラフト1位で阪神入団、現オイシックス新潟)の131安打(東京六大学野球歴代最多)も全部見られた。幸せな14年間でした」と感慨深げに振り返った。

 その間、ドラフト指名選手が出るかどうか微妙な年もあった。「丸山(和郁外野手=2021年ヤクルト2位)や村松(開人内野手=2022年中日2位)が『自分たちの代で記録が途切れたらどうしよう』と心配していたと聞いて、そういう重圧があったら選手かわいそうですから、早く記録が途切れてほしいと思ったこともありました」と親心をのぞかける。

 結局、記録を継続したままバトンを後任へ渡すことになり、「先輩の姿を見ながら、そこ(プロ)を目指してやっている選手が常にいますから、来年以降も続くのではないですかね」と微笑んだ。


明大を14年指導した田中武宏監督(右)【写真:加治屋友輝】

■“野球だけ”の選手は採らない方針、セールスマンとして鍛えたフットワーク

 プロが求める人材を輩出し続ける秘訣は何か。田中監督に聞くと、少し考えを巡らせた後、「スカウティングだと思います。選手は高校でピークを迎える子、中学ですごいことになっている早熟な子など様々です。大学で伸びる選手かどうかを見極めることが、難しいけれど大事だと思います」という答えが返ってきた。

 田中監督は就任以降、全国の高校を回り、有望選手の発掘・選定も行ってきた。自身が現役時代に明大、日産自動車でプレーし、引退後に自動車のセールスマンとして駆け回った経験で、フットワークや人間観察力、交渉力が鍛えられた。

 明大野球部OBの1人は「ウチは“野球だけ”の選手は採りません。大学生として東京に出てくれば、遊びの誘惑も多いですから、しっかりした選手でないと伸びない。田中監督は全国大会はもちろん、各高校の練習も見に行って、性格や練習に対する姿勢を含めて選手を観察してきます。前提として、スポーツ推薦入学には学業成績で基準をクリアすることも必要です」と指摘する。

 明大では来年のドラフトでも、今夏の国際大会で侍ジャパン大学代表の4番も打った小島大河捕手(3年)、192センチの長身で最速153キロを誇る高須大雅投手(3年)らの指名が有力視されている。名将の“スカウティング力”も継承されていくのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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