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小学生のうちから“過度な期待”は禁物? 甲子園やプロよりも大切な「野球人生」

Full-Count / 2024年11月21日 7時50分

東京・杉並区で野球をするシュン君(右)と西村さん【写真:西村氏提供】

■2歳から野球を始めたシュン君、東京・杉並の「西田野球クラブ」に入部

 親から子への「過度な期待」は時として可能性を狭めてしまう――。昔に比べて野球のレベルは見違えるほど高くなり、少年野球でも最新の技術や理論が取り入れられている。子どもたちや親は何を目標にすればいいのか。7歳の野球少年、長男・シュン君を育てる西村さんは「野球だけが目的ではなく、野球から学んで人生を切り開いていく人になってほしい」と、親子の時間を大切にしている。

 楽しく、長く野球を続けることは難しい。西村さんは高校時代に滋賀県・石山高校の硬式野球部に所属。最高成績は県大会ベスト4、最後の夏の大会は早々に敗退した。「先輩方は1994年に甲子園初出場。私も憧れて入学しましたが、甲子園には届かなかった」と振り返る。高校で完全燃焼し、大学では野球とは離れた生活を送っていた。

 家庭を持ち息子が生まれると、眠っていた“野球熱”が再燃した。「野球をやらせたい気持ちというよりも、私が野球だけをやってきたので、野球を通じてであれば息子に伝えられることが沢山あると思いました。それを自分の子育ての形にしたいと考えるようになりました」。

 シュン君は当時、2歳。渋谷区から杉並区に引っ越したことを機に、近隣すべてのチームに「2歳児で入部できませんか?」とアプローチし続けたが、結果は全滅。2歳での入部は叶わなかったが、その後、幼稚園年長から受け入れてくれるチームがあることを知った。


体幹強化やバランス強化にも力を入れる【写真:西村氏提供】

■親の期待やエゴの押しつけにならないために…子どもと向き合う時間を大切に

 それが、1970年創立の東京・杉並を拠点とする西田野球クラブだ。小学校から高校まで捕手一本でプレーしてきた西村さんもコーチとして在籍することになり、指導を始めるのと同時に、「息子と一緒に練習の振り返りをするための“日記帳”として」、インスタグラムのアカウント「shun_20170716」も開設した。

 多彩なチーム練習に加え、平日は自宅でティー打撃、ゴロ捕球などの基礎を徹底。トレーニングボールを使った体幹強化やバランス強化にも力を入れる。シュン君の「野球が上手くなりたい」という思いに応えるため、西村さんもサポートしている。「今は野球だけを一途にやるよりも、他のスポーツや運動も通じて身体を動かしてほしい。知見が広まる。もしも他のスポーツを選ぶ結果になったら、それはそれでいい」という思いから、空手や体操教室でも活動する日々だ。

 インスタグラムで綴るシュン君の“成長日記”は評判を呼び、野球を始めた少年少女の保護者から注目を集めている。小学1年生とは思えないプレーを見せるシュン君。憧れは巨人・岡本和真内野手だ。甲子園やプロ野球選手など期待も膨らむが、西村さんは苦笑いを浮かべる。

「息子が夢を持っているなら、もちろん応援します。他方、生活環境や世情的に野球を続けることが本当に難しくなったと感じます。幸運にも私たちがこの地域で野球をできるのは、近隣の皆さんが協力してくださるから。もちろん家族の理解も。特に周囲への感謝と、試行錯誤しつつ毎日努力を積み上げることの大切さ。この2点を日頃から伝え続けています。息子には夢の実現と同じくらい、野球から学んだことを人生で活かせるようになってほしいです」

 野球での将来を見据えた練習も大切だが、それが親の期待やエゴの押しつけにならないために、子どもと向き合う時間を大切にしているという。「野球をどこまで続けるかを決めるのは親ではなく、子ども自身。どのような道を選ぶとしても、親子の練習から学んだことを支えにして『やってみよう』と自分の道を切り開いていける人になってほしいですね」。西村親子の挑戦は始まったばかりだ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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