試合中に起きた異変「どうにもならなくなった」 元中日HR王が見舞われた“悲劇”
Full-Count / 2024年11月29日 6時50分
■元中日、ロッテの宇野勝氏は名門・銚子商に進学…当初は投手だった
1984年にセ・リーグ本塁打王に輝くなど、中日、ロッテで通算338本塁打を放った宇野勝氏(野球評論家)は1974年に銚子商に進学。投手として野球部に入部した。最初は球拾いとランニングでしごかれる日々。その年は夏の甲子園で優勝したが、足の怪我でスタンド応援部隊にも入れなかった。それが、新チームではいきなり背番号「1」をつかむ急成長。だが、その後に試練が待っていた。1年秋の千葉大会初戦で右肘に異変が生じ、投球不能状態に陥った。
甲子園に行きたい一心で銚子商に入学した宇野氏はまず、同期の野球部員数に驚いたそうだ。「最初60人くらい入ったと思う。当時は甲子園の常連校だったけど、そんなふうだとは知らなかったから、もうびっくりしたわけよ。こんなに入るんだってね」。1年生は全員球拾いからスタート。「あとはランニングのしごきだよね。それにどれだけ耐えられるかってことでね。で、1か月くらいしたら半分の30人くらいになって、やっていくうちにどんどん減っていくんだよ」。
すさまじい量を走らされ「走るのと球拾いだけだからつまらないわけですよ。それでやめる人も多かったかな」。宇野氏は耐え抜いた。「1学年が最終的には、いつも14~15人になるんだよね」。その年の銚子商は1年生でベンチ入りなんてとんでもないほど、レベルも高かった。3年生のエース右腕・土屋正勝投手(元中日、ロッテ)、2年生で「4番・三塁」を担う篠塚利夫内野手(元巨人)らを擁して、甲子園に春夏連続出場。夏は全国制覇を飾った。
歓喜の瞬間を宇野氏は「家のテレビで見ていたと思う」と話す。「1年生もほとんどが甲子園に行っていたよ。(スタンドでの)応援もそうだけど、球拾いとか(練習の)手伝いもあるからね。でも俺は行かなかった。足の甲だったかな、怪我していたんでね。『お前は行っても何にもならんな』と言われて残った。(野球部で)行かなかったのは3~4人くらい。その間は練習もあまりしていた記憶がない。ちょこっとやって終わりみたいな感じだったんじゃないかな」。
■銚子商1年秋に背番号1も千葉大会初戦で右肘に異変…試合も敗退
1974年夏の甲子園は8月9日に開幕した。銚子商はPL学園(大阪)、中京商(三岐)、平安(京都)、前橋工(北関東)を撃破。防府商(西中国)との決勝戦に7-0で勝ち、初優勝を飾ったのは8月19日だった。「勝ったよ、また勝ったよ。まーた勝っちゃったよってね。だからずーっと帰ってこないわけじゃん。暇だった覚えもある。まぁ、甲子園に行っても手伝いだったし、そこまで行きたいとも思っていなかったけどね」。
新チームになって宇野氏は投手として頭角を現した。「(1年)秋の県大会の時には背番号1をもらった」。強豪校のエースに抜擢。甲子園を沸かせた土屋の“後釜”に指名されたのだから、いかに期待されていたかわかるところだろう。1学年上に篠塚がいたチームは十分、翌年の選抜出場を狙えるレベル。宇野氏も当然、力が入った。しかし、ここで邪魔したのが右肘痛だった。しかも秋季千葉大会初戦の試合中に「どうにもならなくなった」という。
「その日は練習の時から、あれ、何か肘が痛いなとは思っていたんだよね。まぁ何とかなるだろと思って先発して3回をパーフェクトに抑えたんだけど、肘が曲がったまま動かせなくなって……。これでは投げても迷惑をかけちゃうと思って交代したんだけど、試合にも負けちゃったんだよねぇ」。怪我とともに翌春の選抜大会出場も絶たれ、エースの座も失った。「しばらく投げることも打つこともできなかった。2、3か月はただ走るだけだったんだよね」。
結果的に、宇野氏はこの怪我がきっかけで内野手転向となる。「いろんな治療をしたよ。最終的には時が、って感じで治ったんだけど、今の感覚ならたぶんトミー・ジョンみたいな手術をしなきゃいけなかったんじゃないかな。(右肘痛発症の)1年秋のあの試合、千葉寺球場だったのは覚えている。あのままピッチャーだったら、どういう人生だったんだろうね」と当時を思い浮かべながら話した。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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