運動乏しい子に「相手の胸へ投げて」は逆効果 上手な投球動作に導く“難易度設定”
Full-Count / 2024年12月3日 7時50分
■初心者はボール遊びや運動能力を高める動きから…少年野球の「投げ方指導」を解説
初めてボールに触れる、あるいはチームに所属する少年野球では、運動能力を高めるトレーニングを積極的に取り入れながら、「うまく投げる」感覚を養っていきたい。Full-Countでは少年野球の現場をよく知る専門家に、“投動作”指導の注意点や練習法について取材。プロ野球のオリックスやMLBのナショナルズでもトレーナー経験を持つ高島誠氏に、小学生・中学生たちの「投げ方」にまつわる意識や練習方法を語ってもらった。
トレーナーとして、現在は小学生・中学生を含めて幅広く現場を見ている高島氏は言う。
「今の子どもたちは、チームに入ってから野球をスタートする子が増えていると思います。少年野球を指導する世代が子どもだった頃は、技術を教えてもらう前に公園などで遊び感覚で野球をやっていたものですが、今は野球の『動き出し』が変わってきましたよね」
一度もボールを投げたことがない子どもも野球チームに入る可能性がある現代において、「子どもたちは野球に至るまでのことをもっとやるべきでしょうし、指導者は『投げる』動きができるようになってから、細かい指導に移行しないといけない」。たとえば、自転車に乗れない子どもに、初めから自転車競技を教えるような野球の指導をしていませんか? 高島氏はそう疑問を呈するのだ。
だからこそ、「ボール遊び」から始めてみるのもいい。「相手の胸に投げなさい」と制限をかけ、言わば失敗ありきで「してはいけない」ことを前提に教えるキャッチボール。そんな野球の投げ方を学ぶ前に、当て鬼(鬼ごっこにボールでタッチするルールを加えた遊び)やドッジボールなどで楽しみながら投げる動きを身に付けることも大切だ。高島氏が携わる東広島ポニーで取り入れている、道具を使わずに「走る」「跳ぶ」「登る」などの移動動作を身に付けるパルクールで、まずは運動能力を高めることも効果的だと言う。
Mac's Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】
■投球の距離を短くしながら「うまく投げる」感覚を養う
子どもたちが「投げ方」を身に付けていく中で、うまく投げられる選手が投手を任せられるケースが多いだろうが、その“選択”の難易度を下げてもいいと高島氏は言う。
「たとえば、通常のマウンドからうまく投げられない子どもがいたとしたら、投球の距離を半分にして投げさせる。うまくいかないボーダーラインを下げてあげる。半分、あるいは4分の3と投げる距離を短くしながら、うまく投げる感覚を養うことも効果的ですね。そういう中からピッチャーを選べば、子どもたちの可能性は広がると思います」
理想は「全員がピッチャーをできること」とも言う。試合となれば投手の球数制限がある。投手経験を持つ選手が多ければ、子どもたちそれぞれの負担も軽減される。
「主戦で投げている子どもを休ませることができる。それぞれの負担を分散することができる。絶対的な存在が1人しかいなかったら、その選手は『休みたい』と言えないし、たとえば肩肘が『痛い』とも言えなくなってしまう。そういう状況をなくしたり、将来的に別のポジションを守るとしても、ピッチャーができる子どもが増えることはいいことだと思います」
体の成長期は人それぞれだが「チャンスを与えれば、どんどんと成長していく子どもはたくさんいる」と言い、投手の育成でも可能性を見極め、その能力を引き出してあげることが重要だと話す高島氏は、12月16日から開催される「投球指導week」に出演予定だ。(佐々木亨 / Toru Sasaki)
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