西武・平良、先発直訴の正当性 日米で広がる“格差”…主張する「貢献度」の評価
Full-Count / 2024年12月5日 7時30分
■平良は先発の2023年にWAR2.9…20セーブの2021年は1.9
西武・平良海馬投手は3日、球団事務所で契約更改交渉に臨むも「先発か中継ぎかの件で、サインができない状況です」と口にして保留した。平良は先発を希望したが、球団はリリーフへの配置転換を求めた。平良自身は「先発の時の方が貢献度が高いというデータがある」と語り、西武ファンのみならず球界でも大きな話題を呼んでいる。果たしてその主張は“正当”なのか検証したい。
平良は2019年に1軍デビューし、2021年には62試合に登板して3勝4敗20セーブ、防御率0.90の好成績を残した。2022年も61試合に投げて防御率1.56を記録したが、そのオフの契約更改交渉で「2019年のオフから、先発をやりたいと言っていて、(チーム事情で)やらせられないと3年間が過ぎた。さすがに4年目は中継ぎはやれない」と直訴。この時も保留し、2度目の交渉で球団が折れる形でサインした。
そして先発に転向した2023年。右腕は23試合に先発して11勝7敗、防御率2.40と見事に結果を残し、自身の要望の“正しさ”を証明してみせた。今季も開幕から先発を務め、5試合に先発して1勝2敗、防御率1.42をマークしていたが、右前腕の張りで5月9日に出場選手登録を抹消。復帰まで3か月を要し、「先発より中継ぎの方が早めに復帰できるので」との理由で中継ぎに配置換えした。
今回の交渉で平良は「球団から頂いた資料の中にも、2022年の中継ぎの時の僕の貢献度と、23年の先発の時の貢献度を比べると、先発の方が貢献できていたという数値がある」と主張。具体的なデータは明示されなかったものの、野球において貢献度を示す指標が、メジャーリーグでは一般的な「WAR(Wins Above Replacement)」が挙げられる。
■WARはメジャーで一般的、アウォード投票にも重視される
「WAR」は打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、代替可能選手と比較してどれだけチームの勝利に寄与したかを示す。メジャーではMVPやサイ・ヤング賞投票を決める際にも重要視されている。日本でもセイバーメトリクスの観点からプロ野球の分析を行う株式会社DELTAが算出しており、平良の“貢献度”をみてみたい。
平良のWARは2020年が0.8、20セーブの2021年が1.5、2022年が1.6だった。そして先発に転向した2023年は2.9。右腕の言葉を借りれば「先発の方が貢献できていた」と言える。さらに、2023年のWARは投手両リーグ10位タイに位置していたが、2022年は27位タイ。中継ぎの評価が低いように感じるかもしれないが、今季のリリーフ投手のWAR1位は大勢(巨人)の1.3、昨年はライデル・マルティネス(中日)の1.5。全体順位はそれぞれ38位、34位タイとなっている。
「先発>救援」の図式は日本に限った話ではない。今季74回1/3を投げて47セーブ、防御率0.61を記録したメジャー屈指の守護神、エマニュエル・クラセ(ガーディアンズ)のWARも2.2で全体61位(米データサイト「ファングラフス」版)。昨年救援1位のWRA2.8のタナー・スコット(当時マーリンズ)も全体35位にとどまっている。
クローザーやセットアップは僅差の場面、勝敗に直結するような場面での登板機会が多い一方、イニング数は限定される。野球という競技が原則的に「9イニング」制で行われていることから、長いイニングをこなせる=労働力の高い選手は“量”を稼ぐことができ、そこに“内容”が伴うことで勝利への貢献が高いというのが、WARにおける投手評価の大まかなコンセプトになる。
必ずしもWARの評価が投手の“序列”を決めるわけではない。とはいえ、メジャーの契約ランキングを見ると、リリーフ投手の最高額はメッツのエドウィン・ディアス投手で1億200万ドル(約153億円)。しかしディアスの上には、二刀流のドジャース・大谷翔平投手を含めて先発投手が16人入っており、待遇の差は一目瞭然となっている。
平良はメジャー移籍希望を表明している。もし海を渡ることになれば、FA市場での需要を鑑みても先発投手が“できる”ことは大きな強みになり、契約金額も跳ね上がる可能性も十分。球団の頭を悩ませているのも、平良が先発、救援ともにこなせてしまう器用な能力の持ち主であることも一因だろう。最終的な帰着は、先発と救援の“貢献度”の判断ということになるかもしれない。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)
データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。
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