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捨てた大企業の安定 13か国の選手が集結、日本初のWLが“異例だらけ”の理由

Full-Count / 2024年12月12日 7時30分

リーグの代表を務める33歳の鷲崎一誠氏【写真:木村竜也】

■日本初のウィンターリーグが沖縄で開催されている

 12月上旬、まだ暖かい風が吹く沖縄で汗を流す選手たちがいる。11月23日から12月19日まで沖縄県内で「ジャパンウィンターリーグ」が開催されている。今年で3年目を迎え、1軍を目指すプロ選手から、NPB入りを目指すアマチュア、海外でプレーする選手らがしのぎを削る。そんなジャパンウィンターリーグには、他では類を見ない様々な施策が存在する。

 今年から西武、楽天、DeNAからも選手が派遣され、米国や台湾をはじめとする13の国・地域からも夢を追う選手が集まった。中にはパドレスの2Aにいる選手や台湾リーグ(CPBL)でドラフト1位指名を受けた選手も参加している。スタンドにはNPBや独立リーグだけでなくMLBの関係者も足を運ぶなど、レベルや注目度は年々上がっている。

 そんなリーグの代表を務める33歳の鷲崎一誠(わしざき・いっせい)氏には、どうしても立ち上げたいという強い思いがあった。自身も大学まで野球を続けたものの、出場機会に恵まれず引退を決意。ユニクロを展開するファーストリテイリングに就職し5年間務めたが、「自分と同じように悔しい思いをしている選手たちにトライアウトの機会を与えたい」と退職。沖縄にも詳しくなければ、人脈もゼロからスタートし、構想期間を含めわずか1年半でリーグ開催まで漕ぎ着けた。

 大企業での安定を捨てて立ち上がった。それでも道を切り開く者に否定的な声は降り注いだ。「最初なので難しさはありました。『若僧がキャリアもないのにできるわけがない』『私もやろうと思ったけど結局立ち上がらなかったよ』とか色々な人に言われましたね」。それでも諦めることは無かった。「今まで誰も本気でやろうとしなかっただけなんじゃないかなと思います。本当に人生を、命をかけて動いたので。それをやっただけです」。さらりと話すが簡単なことではない。そんな情熱がリーグのコンセプトに反映されている。

■参加資格は無し…鷲崎氏が目指す新しいリーグ像

 年々レベルは上がってきているが、参加選手は基本的に“来るもの拒まず”のスタイルだ。「最低限、誰でも参加出来るんです。去年までサラリーマンだったけど、もう1度夢を追いかけてトライアウトを受けに来ている選手もいますし、もう32歳だけどもう1回野球をやりたいんだって仕事を辞めて参加したっていう選手もいます」。

 様々な理由で野球を諦めた人たちに“試合”をする機会を与えることを大事にしている。当然ながらレベルの差は出てくるため、「アドバンス・リーグ」と「トライアウト・リーグ」の2部門にレベル分けしてチーム形成する。「ある程度レベルが均一でないと、やっている選手もそれを見に来たスカウトの方々も満足いくものではないので」。

 他にも特徴はある。NPBから派遣してもらう選手の状況や育成方針について所属球団と擦り合わせを行う。ここまで運営側がケアをすること自体珍しいが、選手の特徴や課題を共通理解することで、的確なフィードバックまでサポートできると話す。さらに打撃の測定・分析をする機器の「ブラスト」を設備し、選手全員がデータを駆使しながら成長できる環境まで整えている。

 これだけでは終わらない。さらに驚きなのは週に2回のレベルアップ講習会も実施。様々なジャンルの講師を招き知識を深める。野球の技術やメンタルだけでなく時には競輪協会の方に来てもらうなど、幅広い知識を共有することで選手の人生を最大限サポートする。

 鷲崎氏は「野球界の登竜門にしていきたいんです。世界中から集まって、選手だけでなく、指導者やスカウト、メディアの方全ての人が繋がって化学変化を起こしたいんです」と野球界全体の未来を見据える。まだまだ始まったばかりのジャパンウィンターリーグ。選手の未来を、野球界の明るい未来を本気で考える33歳の行動力は加速し続ける。(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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