剛腕の“穴”は埋まるのか…24歳は「アクセントになる」 中日に根付く現ドラ覚醒の系譜
Full-Count / 2024年12月17日 7時10分
■「ある程度の戦力を放出しないと、いい選手を獲れない」
今年も12月9日に行われた現役ドラフトで、13人の移籍が成立。この中から中日・細川成也外野手、日本ハム・水谷瞬外野手のように“大化け”する選手は現れるのか。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析する。
「ベイスターズが上茶谷(大河投手=ソフトバンク入り)を放出したのは意外でした。まだまだ戦力になると思っていましたから。他にも、抑えの経験がある矢崎(拓也投手=広島→ヤクルト)、本田圭佑(投手=西武→オリックス)、浜地(真澄投手=阪神→DeNA)、畠(世周投手=巨人→阪神)ら、実績のある選手の名前が目立ちました」と野口氏。
「現行制度では、ある程度の戦力を放出しないと、いい選手を獲れない。それを各球団がしっかり認識したということだと思います」と指摘する。他球団から獲得希望を最も多く集めた球団が最初に指名権を得るシステム。いい選手を放出すれば、その分、利があるわけだ。
現役ドラフトは2022年に始まり今年で3回目だが、昨年日本ハムに指名され移籍した水谷は、ソフトバンク在籍5年間で1軍出場なしだったが、新天地で97試合出場、打率.287、9本塁打、39打点とブレーク。セ・パ交流戦ではMVPに輝いた。DeNAで控えに甘んじていた細川も一昨年の現役ドラフトで中日に移籍すると、クリーンアップに定着し、今季はリーグのベストナインにも選出されている。前所属球団時代とは、まるで別人のようだ。
「そういう意味で僕が注目したいのは、ヤクルトから楽天に移籍する柴田(大地投手)です。プロでは故障がちですが、社会人時代は“分かっていても打てないストレートの持ち主”と評判でした。阪神・藤川(球児)監督の現役時代のように、スピードガン表示以上に打者が速く感じるタイプで、完全にリリーフ向きだと思います」と野口氏は言う。
柴田は日本通運から2021年ドラフト3位でヤクルト入りし、来季がプロ4年目となる右腕。1軍では2022年と24試合に1試合ずつ登板しただけだが、イースタン・リーグでは2年連続で40試合に登板し、今季は防御率2.17をマークしている。
■「ライデル・マルティネスが抜ける中日救援陣」にハマりそうな右腕
移籍先の楽天では今季、藤平尚真投手がプロ8年目にして先発から中継ぎに転向し大ブレーク。47試合1セーブ20ホールド、防御率1.75の好成績を挙げ、11月の国際大会「WBSCプレミア12」では侍ジャパンのセットアッパーを務めた。
「来季も抑えは則本(昂大投手)、セットアッパーは藤平が務め、7回を担うのは基本的に左腕の鈴木翔天になると思いますが、相手に右打者が並ぶ巡りなら、そこを右の柴田が任されてもおかしくない。楽天のリリーフ陣は他にも酒井(知史投手)、宋家豪らがいて人材豊富なので、酷使される心配もないでしょう」と野口氏は見ている。
楽天から中日に移籍する右腕・伊藤茉央投手にも、飛躍の可能性があるという。野口氏は「サイドスローの割にスピードがありますし、スライダー以上にシンカーに特長があり、左打者も苦にしないタイプ」と紹介。「中日は抑えのライデル・マルティネスを失った分、救援陣の枠が1つ空いた。松山(晋也投手)、清水(達也投手)らオーバースローの本格派が多い中で、伊藤の存在はアクセントになると思います」と分析する。
野手では、ロッテから西武入りした平沢大河内野手に注目。「内外野どこでも守れる選手ですが、球団としては外崎(修汰内野手)が三塁にコンバートされる見込みの中で、二塁のレギュラー争いに、はめ込みたいのだと思います」と察する。
「各チームには、チャンスを与えたくても、戦力バランス的に与えられない選手がいる。首脳陣に嫌われたり、見切りをつけられたりしている選手もいる。その中で、右の長距離砲を渇望していた中日に細川が見事にハマったように、働き場所を与えて、やる気を出させれば、開花する選手がいます。そういう意味で現役ドラフトは非常に有意義だと思います」と野口氏。今年の13人の中で、別人のように豹変を遂げるのは誰か。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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