V逸→名将も退任「気持ちが切れた」 金字塔到達も…中日主砲が“苦悩”を抱えた1年
Full-Count / 2024年12月17日 6時50分
■宇野勝氏は1991年に通算300HR、1500安打達成も…長期スランプに苦しんだ
4番もあれば8番もあった。元中日内野手の宇野勝氏(野球評論家)はプロ15年目の1991年、通算300本塁打と1500安打を達成した。ドラゴンズを代表するスラッガーの証しだが、シーズン自体は歯がゆいものだった。6月から7月にかけては23試合連続三振。好不調の波が激しく、負傷の落合博満内野手の代役で4番として好結果を出したかと思えば、長期スランプに陥り、8番で起用されたことも……。「気持ちが切れた部分もあった」と回顧した。
星野仙一監督の第1次中日政権ラストイヤーとなった1991年、宇野氏は4月6日の巨人との開幕戦(東京ドーム)に「7番・三塁」で起用された。調子は今ひとつだった。4月を終えて打率.136、2本塁打。「俺って、スランプになると長くなっていたイメージがある」。打ち出すと止まらないのも特徴で、4番・落合が5月2日から肉離れで戦線離脱。この時は宇野氏のバットの状態が上向いていった。
5月3日のヤクルト戦(ナゴヤ球場)は「5番・三塁」で4打数2安打2打点。4回裏にはヤクルトの助っ人左腕ティム・バートサス投手から3号2ラン。これが21人目の通算300号アーチになった。4日の広島戦(広島)からは「4番・三塁」で、チームを支えた。5月は5本塁打を放つなど、星野監督の期待に応え、落合不在の穴を埋めた。5月28日の落合復帰後は「5番・三塁」。かつての「4番オレ流、5番ウーヤン」の並びに戻った。
しかし、この年は調子の浮き沈みは例年以上に激しかった。6月9日の大洋戦(札幌円山)から7月14日の巨人戦(東京ドーム)まで23試合連続三振。5番だった打順は8番にまで下がった。7月は1本塁打だった。「確かに俺もけっこう三振したけど(シーズン)100以上は3回(1990年は105)。試合数は違うけど最近の(ヤクルトの)村上(宗隆内野手)の数はすげーなって思う(2024年は180三振)」と明るく話したが、苦しい時期だったのは間違いない。
■チームは8月まで首位も9月に急失速でV逸…星野監督が退任した
8月は「7番・三塁」で出場した3日の阪神戦(ナゴヤ球場)で3発、9日からの大洋3連戦(ナゴヤ球場)では3試合連発、さらに「6番・三塁」の14日、「5番・三塁」の15日の広島戦(広島)でも2試合連発と復活したかに見えたが、その後再びスランプ状態に突入。打順が6番、7番、8番へと下がっていった。「たぶんそんなふうになった時には気持ちが切れた部分もあるよね。ある程度、気持ちが盛り上がっていけば、どうにかなったんだろうけどね」。
チームも8月終了時点で首位を走り、2位・広島に4.5ゲーム差をつけながら、9月に大失速してひっくり返された。「広島球場での広島戦で、なんで今中(慎二投手)をベンチに入れているのに(リリーフで)投げさせなかったんだよって、落合さんと話した覚えもあるなぁ。同点に追いついて、いいゲームだったんだけど負けちゃってね……」。9月24日には、星野監督の退任が発表された。中日ナインは最後の力を振り絞ったが、広島に逆転Vを許した。
「星野さんは奥さんの具合が良くないってことで辞めるって話だったけど、やっぱりあそこで負けだしたってこともあったと思うよね」。宇野氏にとって星野監督は兄貴的な存在。それだけに優勝を逃し、指揮官に責任をとらせる形になり、悔しい気持ちでいっぱいだった。125試合、26本塁打、74打点ながら打率は.238。10月15日の広島戦(ナゴヤ球場)では通算1500安打を達成したが「ということは、そろそろ終わりが近づいてきたころだね」とつぶやいた。
星野監督の後任には通算2274安打の2代目ミスタードラゴンズ、バックトスなどの華麗な守備でも知られた高木守道氏が就任した。現役時代、コーチ時代、1986年の監督代行時代も知る宇野氏にとってはまたまた大先輩監督だ。当然、もう一度、気持ちを奮い立たせた。まさか中日での選手生活が残り1年になるとは思ってもいなかった……。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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