“高反発禁止”の12球団Jr.に選ばれる資質は？ 元G守護神が説く「落ちるのも早い」子の特徴

巨人ジュニアの西村健太朗監督【写真：高橋幸司】

■“プロの登竜門”に出場する巨人ジュニア・西村健太朗監督に聞く小学生選考のポイント

　プロの視点で“逸材小学生”を選ぶポイントは、基本に忠実・丁寧であることだ。今月26日から神宮球場とベルーナドームを舞台に開催される「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 ～第20回記念大会～」で、読売ジャイアンツジュニアは10年ぶりの頂点を目指す。就任5年目の西村健太朗監督は、基礎を大事にしないと「落ちていくのも早い」と子どもたちへメッセージを送る。

　ジュニアトーナメントは2005年にスタートし、今年で20回目の節目を迎える。現役時代は最多セーブ獲得など守護神として活躍し、2020年から巨人ジュニアを指揮する西村監督は、「（2020年に）関東開催になって以降は特に認知度が広まっている印象がある。同じタイミングでプロ入りするジュニア出身選手も増えてきていますね」と大会の存在意義を高まりを実感している。

　今年のチームは堅い守備からリズムを作り、1点を奪いにいく粘り強さが売り。伝統のオレンジのユニホームに小学生で袖を通せるのは大きな経験だ。今年は4段階のセレクションで、本戦に出場する16人に加えて2人の「練習生」を選考したが、精鋭を絞るにあたって西村監督が注視したポイントはどこにあったのか、改めて聞いてみた。

　まずは“小学生らしさ”。「味方が点を取られた時に下を向くのではなく、チームを鼓舞できる元気の良さは大きい」。そして、技術面で重視したのはキャッチボールだ。「キャッチボールで大体（能力が）わかる。雑な子は伸びない」と言い、ジュニアメンバーにも基本の大切さを訴える。

「『遠くに投げたい』『速い球を投げたい』からと、体の使い方が雑になっていることが多いです。距離を延ばす前に、まずは塁間でしっかりストライクを投げられること。プロでも丁寧にやっていることですから大事にしてほしいですね。ジュニアに入ったからといって『僕は上手い』と勘違いして適当にやっていると、落ちていくのも早いです」

今年のチームは堅守から1点を奪いに行く粘りが特徴【写真：高橋幸司】

■低反発に負けない“振る力”…保護者へは「コミュニケーションを大切にして」

　打撃面でポイントに挙げたのが“振る力”だ。学童野球では来年から、打球部にウレタンなどの素材を用いた大人用「高反発バット」の公式戦使用が禁止される。ジュニアトーナメントでは先んじて2022年から金属・木製バットの使用に制限されているが、普段自チームで高反発バットを使っていると、ジュニア入りした時に“ギャップ”を感じてしまう選手も少なくないという。

「金属や木製は、しっかり振らなければ強い当たりを飛ばすことができません。当てに行くのではなく、強く振れる子というのは見ていますね。遠くに飛ばす能力は魅力ですが、きちんと捉えていないのに（バットの性能で）飛んでいくのでは意味がありません」

　今後のジュニア入りに憧れる小学生を持つ保護者にも伝えたいことがある。意思疎通の大切さだ。「お子さんが試合で打てなかった、四球を出してしまった。そういう時に『なんでできないんだ』ではなく、『なぜそうなったのか』を聞いてからアドバイスしてほしいですね」。時には叱ることも必要かもしれないが、まずはコミュニケーションをしっかり取ることで、伸び伸びプレーできる環境を作ってほしいと訴える。

　2022年は決勝で阪神に惜敗。129キロ左腕・藤森一生投手（現駿台学園）ら有力選手を擁した昨年も準優勝にとどまった。「2年連続2位なので、今年こそは優勝したいですね」。選手たちの将来を見据えつつ、チームとして10年ぶり、自身としては初の頂点を目指す。（高橋幸司 / Koji Takahashi）