告げられた「いらない」 半年でボーイズ退団→野球部からは入部拒否…広島名手の挫折
Full-Count / 2024年12月23日 6時50分
■小3から軟式野球チームでプレー、小6で鯖江ボーイズ入りも…
元広島外野手の天谷宗一郎氏(野球評論家)にとって野球人生、最初の大きな目標は「福井商で野球をして甲子園に行くこと」だった。1995年、鯖江市立鳥羽小6年の時から「そればかり考えていた」という。2000年夏、2001年春夏と福井商で甲子園に3度出場して見事に夢はかなうが、それは挫折を乗り越えてのことでもあった。「福井商に入るための近道と思って鯖江ボーイズに入ったんですが、硬式(球)があまりにも痛すぎて……」など苦笑しながら振り返った。
天谷氏は小3から鳥羽小スポーツ少年団の軟式野球チームに入った。「最初だけファーストで、あとはずっと外野手。ピッチャーはやらせてもらえなかったです」。父・鉄雄さんとの約束で素振り100回を毎日続け、野手として力もつけていった。「小6の時、福井県で優勝して全国大会でベスト8。打順は1番か3番だったかな。守備はだいたいレフト。調子に乗っていたんで、レフトゴロにしようとよく狙ってやっていましたね」。
小6時には「福井商で野球をやる」を大目標に掲げていた。「祖父が亡くなったんですけど、母親に『おじいちゃんが福井商の野球部に入って甲子園に行ってほしいって言っていたよ』と聞かされて……。福井商は祖父の母校だったそうです。野球部ではなかったらしいんですけど、甲子園で応援するのが夢だったって……。それからは何よりもまず、福井商で野球をする、ってことしか考えていませんでした」。祖父・幹男さんの願いが天谷氏を突き動かした。
「中学生になる前に鯖江ボーイズに入りました。福井商に行く一番の近道は野球でスカウトされること。そこで主力みたいになれば、おのずと声がかかると思ってね」。だが、ことは思い通りに進まなかった。「小6の冬に入ったんですけど、まず硬式があまりにも痛すぎて……。寒い中、打ったら手が痛くてね。試合に出してもらってセンター前に打ったんですけど、詰まり上げて、ピーンって肩からしびれて、もう無理と思って、そこでやめるって決めました」。
■情熱あふれる恩師との出会い 文武両道を貫き推薦枠をゲット
遠征費用などの金銭面、送り迎えと親の負担も大きく「自分のモチベーションの高さと親に協力してもらっているのが、合っていないとずっと思っていて、モヤモヤしていたこともあった」と言い、半年もたたないうちにやめたそうだ。「なので鯖江ボーイズには僕の名前はないと思いますよ」。いきなりの挫折だったが、福井商入りの夢を諦めたわけではない。鯖江市立中央中の軟式野球部から出直そうと考えたという。
「でもね、中学では最初、入部を認めてくれなかったんです。駄目だって言われて……。小学校で全国ベスト8のメンバーで同級生は6人いたんですけど、エースとセカンドは(私立の)福井中学、キャッチャーと僕は鯖江ボーイズで、中央中学の野球部には2人しか入っていなかったんです。そんな中で僕がボーイズをやめて入りたいと言ったんですけど『途中で物事を投げ出すようなヤツはいらない』ってね」
愛情を秘めた厳しい言葉。それが中学時代の恩師・川上一規先生との出会いだった。「親もお願いして入れたんですけど、最初はあえて駄目と言われていたと思います。ボーイズより中学の野球部を下に見るんじゃなく、覚悟を持って入ってほしい。たぶん、そういうことだったんじゃないかなと……」。実際、気持ちも切り替えて、気合も入れ直して野球に取り組んだ。「川上先生はとても熱心な方で野球の本とか器具とかもどんどん取り入れてくれて……。先生に出会えたのはすごく大きかったですね」。
あのままボーイズにいたら、どうなっていたかは分からないが、中学1年途中から中学の軟式野球部に入った時期を「僕にとって、それは一つのターニングポイントだったと思います」と言う。野球だけでなく、勉強も頑張って、祖父の願いでもあった福井商への進学を中学からの推薦枠でつかんだ。「英語の塾とかも行きましたよ。福井商は誰でも行けるような高校ではなかったので、けっこう勉強もしました」と笑顔で話した。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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