フェンス登ってコーチから叱咤「やっちゃいけん」 スーパープレー狙うも…まさかの“失態”
Full-Count / 2025年1月4日 6時50分
■天谷宗一郎氏は2010年横浜戦で、フェンスに登ってホームランを“強奪”
伝説プレーが飛び出したのは2010年8月22日だった。元広島外野手の天谷宗一郎氏(野球評論家)によるホームランキャッチだ。横浜のブレット・ハーパー内野手が放ったスタンドに飛び込みそうな当たりを、マツダスタジアムのフェンスに登って反り返りながら捕った。「いろんなところが、歯車がかみあったプレーでしたね」。その舞台裏を明かすとともに、それから5年後のまさかの“失敗”についても振り返った。
その瞬間、スタンドは大いに沸き返った。中堅を守っていた天谷氏がホームランを捕った。フェンスに駆け上がってキャッチ。2010年8月22日の横浜戦(マツダ)で6点リードの8回、ハーパーの“中越えアーチ”を阻止した。見事なスーパープレーだった。「(8月4日の横浜戦で)赤松(真人)さんが(ホームランキャッチを)やっていたので頭の片隅にはあった。ピッチャーが高校(福井商)の後輩の齊藤悠葵で、そろそろ打たれる頃かなぁと思っていたんです」という。
「バッターもハーパーだったので、持っていかれるかもなと、ちょっと後ろに下がって、ハーパー的には右中間だろうなと思って締めて、ちゃんとしっかりとフェンスの歩測までして準備万端だったんです。そしたら思い描いた打球が来た。打った瞬間にスタンドに行くだろうなと思って、フェンスに登ることに対して何の怖さも躊躇もなくイメージ通りの動きを僕もしてしまった。運もよかったです。パッと上を見たら(打球が)あったんで(グラブを)出しただけです」
天谷氏のこのホームランキャッチは大いに話題となり、今も語り継がれている。「あれで、いろんな方に言ってもらえるし、小学生とかにも『YouTubeで見ました』と言ってもらえるんでね」と目を細める。ただし打球判断について「プロはみんなできますから。あとは(フェンスに)登る勇気があるかの違いです」と話した上で「僕、2軍で(フェンスに)登って(打球が)手前に落ちて捕れなかったことがありましたから」とも口にした。
■2015年の2軍戦では“失敗”…手前に落ちた打球
ホームランキャッチから5年後、2015年8月のソフトバンク2軍戦(由宇)で失敗した。ソフトバンク・松中信彦内野手の一撃を、右翼の天谷氏はフェンスに登って捕ろうとしたが、打球がそこまで届かなかった。登ってから気付いたが間に合わなかった。「松中さんは三塁でアウトにしましたけど、当時、2軍の外野守備コーチだった森笠(繁)さんに『あれはやっちゃ、いけん』と厳しく言われました。そりゃあそうです。若い子が見ている中でしたしね」。
天谷氏は「今だから笑って振り返れるところですけどね」と話すが、それを踏まえても、あのホームランキャッチの完成度はわかるところだろう。開幕から打撃不振にあえいだ2010年は、それで自身にも勢いがついたのもしれない。8月27日の巨人戦(マツダ)では野間口貴彦投手からシーズン6号となる逆転サヨナラ3ランをかっ飛ばした。「たぶん、僕にとっては唯一じゃないですかね。打った瞬間に行ったぁと思ったのは」というほどの会心の当たりだった。
2010年の天谷氏は123試合に出場して335打数82安打の打率.245、6本塁打、35打点、18盗塁だった。7月終了時点で打率.190。そこから盛り返したものの、納得できる成績ではなかった。「(監督の)野村(謙二郎)さんの期待に応えられず、ホントに申し訳ないと思いました」。しかしながら、ホームランキャッチは天谷氏の代名詞みたいなものだし、誇れるものと言っていいはずだ。
その後、マツダスタジアムに赤松&天谷の等身大のスーパープレー人形が飾られたことでも話題になった。「あの時の人形は今、(広島県の)備後庄原駅のホームに展示してあります! そういうふうにやっていただいて、ありがたいです。是非見に行ってほしいです」と笑みを浮かべた。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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