北大から異例のプロ入り…蹴った金融機関の内定 1年で戦力外通告も選んだ“育成”
Full-Count / 2025年1月3日 7時55分
■西武・宮澤太成は北大から独立L経て西武入団も1年で戦力外→育成で再出発
2025年を迎え、選手たちは新たなシーズンへ向け準備を進めているが、一方で2024年オフに戦力外通告を受けた選手は、育成への移行も含め136人に及ぶ。入団からわずか1年で戦力外通告を受けた西武の右腕・宮澤太成投手は、北大法学部に在籍しながら独立リーグでプレー。一般企業から内定を得ていたが、NPBの門を叩いた異色の経歴を持つ。戦力外通告に1度は野球を辞めることも考えたが「試したいことがある」と育成契約を選んだ。
長野高から1年浪人し、北大に進学。北大は過去に全国大会にも出場しており、勉強と野球どちらにも打ち込める大学を選んだ。「大学に行って卒業して、普通に会社員になって働くのかなと思っていました」。だが次第に「もっと上のレベルで野球をやりたい」と思うようになった。3年生になるときに1年留年しており、5年目はリーグ戦に出場できない。そのため、四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスでプレーすることを選んだ。
「大学で野球をやっていく中で手応えを感じ始めて、最終学年を迎える前に『プロか社会人、どちらかで野球を続けたい。勝負してみたいな』と思うようになりました。卒業に必要な単位は早いうちに取り終えていたので、1年間空いたし、どうせ目指すなら高いレベルでプロを目指したいと思いました。徳島は毎年複数のNPB入り選手を輩出している。このチームで活躍すればNPBに行けるだろうと思いました」
自ら試合中の映像を徳島に送ってアピールし、テスト入団。椎葉剛投手(現阪神)や井上絢登内野手(現DeNA)らと切磋琢磨しながら成長し、2023年ドラフトで西武から5位指名を受け、北大初のNPB選手となった。
「ドラフトで指名されなかったら就職する予定で、金融系の会社から内定も貰っていました。安定しているので、そちらのほうが魅力的に映る人もいましたけど、自分はチャレンジしてみたかったです」
■飛躍へ抱く“勝算”「うまくいけば活躍できると思っています」
だが、1年目の2024年は1軍での登板はなく、2軍で12試合に登板し、0勝1敗、防御率3.60。オフに戦力外通告を受けた。わずか1年での通告だったが、予想していなかったわけではない。
「フェニックスリーグの期間中、マネジャーさんに呼ばれて『明日東京に帰って、指定された日時に球団事務所に行ってくれ』と言われました。社会人出身の選手と同じ25歳の年に入団しましたし、1軍でも登板がなかった。『フロントが結果を残せなかった自分を、来年支配下に置いておきたいか』と考えた時に『戦力外の対象だろうな』とは思っていました」
野球が好きでプロ野球選手になったのに、自分でも驚くほど通告を受け入れることができ「野球、辞められるな」と思ったという。「ドラフトで指名されなくても後悔しないように練習してきましたし、プロになってからも、いつ辞めてもいいようにやってきました。そのせいかわからないですけど、後悔はなかった。『意外と大丈夫だ。自分の気持ちはそういう感じなんだ』って、客観的に思ってしまいました」
野球を辞める選択肢もあった。だが、球団から提示された育成契約を結んだ。「活躍するためには『こういう練習をして、こうやったらいいんじゃないか』という仮説があるので、試してみたい。それがうまくいけば、活躍できると思っています。なので、もう1年やってみようと思いました」。
2025年シーズンは支配下契約を結び、1軍30登板を目標に掲げる。悔いのないように全力で歩んできた野球人生はまだ続く。球界屈指の頭脳派は自ら考え出した戦略で道を切り開き、1軍マウンドを目指す。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)
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