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戦力外→社会人入りも滅多打ち「上から見ていた」 元楽天左腕が痛感した“現実”

Full-Count / 2025年1月6日 7時10分

Honda鈴鹿・佐藤智輝【写真:本人提供】

■元楽天の佐藤智輝はHonda鈴鹿でプロ復帰を目指しプレー中

 生まれてから22年過ごしてきたみちのくを離れて1年。現在地は想像していた姿からは程遠かった。昨オフに楽天から戦力外通告を受けた佐藤智輝投手は今季、社会人・Honda鈴鹿でプレーしている。高卒でプロ入りし、野球以外の仕事は未経験。「最初は仕事がきつくて。『これが社会か……』って圧倒されました」。慣れない環境に苦戦しながらも、充実した日々を過ごす。

 野球選手の前にひとりの会社員。野球部の優遇はあるが、もちろん仕事もこなす。受け持っているのは完成車の部品やエアバッグの点検。一度だけ部品のネジが緩いまま、提出してしまったことがあった。「上司の方から『これ1つで人が死ぬかもしれないんだ!』と言われたことがあって。その時に他人事じゃないんだと感じるようになりました」。お金を稼ぐ難しさと、仕事の責任を日々感じている。

 2018年ドラフト5位で山形中央高から楽天入り。同じ東北の山形生まれで、両親も楽天ファン。念願のプロの舞台に立ったが、相次ぐ怪我にも苦しみ5年間で1軍出場はゼロ。2022年から育成選手となり、2023年オフに戦力外通告。同年オフのトライアウトでもNPBからの誘いはなかった。

 前例は少ないのはわかっているが、社会人から再びNPBの舞台を目指すことに決めた。戦力外後に練習相手をしてくれた瀧中瞭太投手から設備や環境について聞き「ここならもう一回プロに行けるのではないか」と思うようになった。同年には森田駿哉投手が2位で巨人入り。「森田投手の穴を埋めてほしい」と言われたこともうれしかった。

■入社してすぐの日立市長杯で1/3回を5失点「悔しいより恥ずかしかった」

 入社してすぐに行われた日立市長杯で、元プロのプライドは打ちのめされた。4月15日のJR九州戦。1-2の4回に2番手で登板したが、満塁弾を許すなど1/3回5失点。「制球も良くなって自信ついて来た矢先で。プロでやってきたと、上から見ていたというか……」。

 調子が悪くなかったからこそ、堪えた。試合後は切り替えることができず、ベッドで呆然とした。その時、声をかけてくれたのはチームメートだった。食事に誘われ「今のうちに課題が出て良かったじゃん」と肩を叩かれた。気持ちが落ち着いてくると、自らの考えの間違いに気づくことがあった。

「正直自分のためだけに投げていた。悔しいより恥ずかしかったなって……」。当時はプロに戻ることだけだった。ただ、都市対抗や日本選手権と、負けたら終わりの舞台で戦う選手の一打は左腕に響いた。そこからはチームのためにと考えを改め、翌週の三菱自動車岡崎との練習試合では先発し、5回無安打9奪三振。「意識一つでこんなにも違うんだ」と実感した。

 その後は左肩のインピンジメント症候群を煩い、都市対抗予選は登板できずに終わった。現在は復帰に向けリハビリをこなす。今でもプロへの思いは消えていないが、その前にやることがある。

「都市対抗で優勝させないと、僕は出て行ってはいけないと思うので」。どちらも決して簡単な道ではないのはわかっている。大きな目標を立て、自らを奮い立たせる。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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