亜大は「おじさんばかり」 運命の一言で入学も…驚いた先輩の姿「えらいところに来たな」
Full-Count / 2025年1月10日 6時50分
■川尻哲郎氏は当初早大進学を希望…セレクションに参加も模擬試験で苦闘
元阪神、近鉄、楽天投手の川尻哲郎氏は1987年、日大二から亜大に進学した。早大進学を希望していたが、諸事情で断念。父・公代(まさのり)さんが監督をする草野球チームに亜大野球部出身者がいた縁もあって、練習に特別参加。大方の予想を覆し、矢野祐弘総監督に見込まれて“合格”をつかんだ。これには、先輩右腕の与田剛投手(元中日、ロッテ、日本ハム、阪神)の存在が大きかった可能性もあるという。
日大二高でに甲子園の夢をつかめなかった川尻氏だが、気持ちを切り替えて進路を大学進学1本に絞った。当時はオーバースロー。「球が速いわけではなかったし、これといった目立ったものもなかったので、どこの大学からも声はかからなかった」。第1志望は早大だった。「早稲田って、かっこいいじゃないですか、それで行きたくてセレクションにも行ったりしたんですけどね。結局、頭でいかなきゃいけないし、そこまで自信はなかったんで……」。
学力が大きな壁になった。「野球部のなかで模擬テストがあったんですが、英語は全然わからなくて……。マークシートだから適当につけたんでしょうね。結果4、5点しか取れていなかった。こりゃあ早稲田は無理だなと思って諦めたんです」。そんな時に「友人に東都大学リーグ戦を見に行こうって誘われて神宮球場に行った。僕は(東京)六大学しか知らなかったんですけどね」。それが新たな道へのきっかけになった。
「パンチ(佐藤)さん(元オリックス)と阿波野(秀幸)さん(元近鉄、巨人、横浜)がいた亜細亜と、新谷(博)さん(元西武、日本ハム)や野村謙二郎さん(元広島)がいた駒沢の試合を見たんですけど、すごいレベルが高いと思った。亜細亜大学はその時初めて知った。どこにあるんだろうってところからだったんですけど、東京じゃん、けっこう近いね、みたいな。じゃあセレクションに、いけるなら行きたいなって思ってお父さんに話したら、お父さんの草野球チームに亜大野球部出身の人がいて、お願いしてくれたんです」
■亜大の練習参加…与田剛氏の隣で投球し、得た“合格通知”
すでにセレクションは終了していた時期だったが、特別に受けることができたという。「ちょうど阿波野さんたちが(卒業で)抜ける年で、亜細亜はピッチャーを多く取っていたんです。それもあって『見てくれるみたいだぞ』『じゃあ行こう』ってことでね。ヨッシャーと思って、いろいろ練習もしていきました。その時に受けたのは僕ひとりだけでしたね。アップして、キャッチボールして……。ブルペンでは(亜大の)矢野総監督が見ている前で投げたんです」。
その結果、“合格”となった。「『ウチに来い』って総監督に言われました。周りはみんな絶対落ちるって思っていたみたいですけどね。球は遅いけど、コントロールと球持ちだけはすごく評価されたんですよ」。川尻氏は笑みを浮かべながら、さらにこう付け加えた。「あの時、僕は(3学年上の)与田さんの隣で投げたんですが、当時の与田さんは球がむちゃくちゃ速いんですけど、コントロールが悪かったんです。それで僕のコントロールが目立ったのかもしれないですね」。
たまたま隣で投げた偶然がプラスに働いたということか。「総監督に『こいつはいける』っていきなり言ってもらえましたからね。僕が(亜大に)入れたのは、もしかしたら、与田さんのおかげだったかもしれない。その可能性はありますよ」。神宮球場で亜大の試合を見たこと、父の草野球チームに亜大野球部出身者がいたこと、そして荒れ球の先輩剛腕の隣で投げたこと……。いろんな条件が重なって縁ができたわけだ。
もっともいざ入ってみると「おじさんばかりでびっくりした」という。「だってひげをはやして、鉢巻きして、ステテコ姿のオヤジが寮の中を歩いているわけですよ。この人たち、何なんだろうって思いました。3歳くらいしか違わないのに、ホントにおじさんだったんでね。そんなに怖い人はいなかったんですけど、えらいところに来たなというのが第一印象でしたね」。こうして川尻氏の亜大生活が始まった。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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