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部活の地域移行で差拡大「空気感全然違う」 土地柄も影響か…懸念される“一極集中”

Full-Count / 2025年1月15日 7時5分

中学指導者講習会が行われた「ふくしまスポーツ未来プロジェクト」の様子【写真:川浪康太郎】

■新潟は活発、石川は慎重…公立中学軟式野球部の地域移行の現状と山積する“課題”

 2023年度からスタートした、公立中学校の部活動を地域のクラブや民間事業者などに委ねる「地域移行」。国は2025年度までの3年間を「改革推進期間」と位置づけ、早期実現を目指す方針を打ち出しているが、現段階では「地域差」が広がっているのが現状のようだ。昨年12月7日に福島市で開催された中学野球指導者を対象とした講習会には、福島県内外の指導者が参加。話を聞くと、各地域の実情の一端が見えてきた。

 新潟県南部の十日町市、津南町を拠点とする中学軟式野球クラブチーム「妻有NEXUS」の真霜崇監督は「新潟は中体連大会にうちを含めて7、8のクラブチームが出場している。十日町市はクラブ化に舵を切っていて、○○中学校というチーム名は消えました」と話す。新潟全域で地域移行が活発化しているといい、妻有NEXUSは「5年かけないと完全移行に間に合わない」という考えのもと2021年4月に発足している。

 発足5年目が近づく中、「課題は山積み」だという。専用グラウンドがないため、毎回の練習ごとに市営の球場や屋内競技場を借りなければならず、その分送迎など保護者の負担も増す。真霜監督は「ここで練習するので来てください、来られなかったらごめんなさい、という“突っぱねた”スタイルになってしまっているのが現状です」と口にする。

 一方、チームは2年連続で「オールジャパンベースボールリーグ中等部全国大会」に出場するなど、着実に実績を積んでいる。また中体連大会を終えた中学3年生には卒業まで「高校野球の準備期間」として硬式野球を指導していることもあり、現在の部員数は50人近くを数える。課題を残しながらも競技力向上には手応えを感じており、「十日町、津南から上のカテゴリーで続ける子、甲子園でプレーする子を育てたい」との熱意を持って選手と接している。


子どもたちのために地域移行の最適解を導き出したい(写真はイメージ)

■「様子見」や“部活動色”残す案も…根底にある指導者の思い

 石川県は新潟と同じ北信越地方だが、状況が異なる。石川県中体連副理事長で金沢市立長田中の野球部を指導する松本健聖さんは、「“都会寄り”の新潟、長野とは空気感が全然違う。北陸3県(石川、福井、富山)は保守的です。土地柄もあるんですかね」と明かす。

 金沢市は「議論はしつつ、様子見」の段階。現場からは「受け皿がない中で移行できるのか」「実際に部活動をなくすことができるのか」といった懐疑的な声も挙がっているという。ただ松本さんが「(石川は)がっつり野球の指導をしたい真面目な教員が多いイメージ」と話すように、単に消極的というわけではない。地域差の拡大にはさまざまな要因が絡む。

 福島県についても、一般社団法人福島ベースボールプロジェクト事務局長で伊達市立伊達中野球部顧問の川名仁さんいわく、「中体連大会のクラブチーム参加はゼロで、なかなか進んでいない」。川名さんは「これは個人的な意見」とした上で、「部活動色を残した地域移行を進めたいんです」と力を込める。想定するのは、数校が合同でチーム運営を行い、教員と地域の指導者が一緒になって指導に当たる仕組みだ。

「我々が大切にしているのは底辺拡大ですが、たくさんクラブチームができると(地域の枠を越えた選手の)“取り合い”になって、自分の地域で野球をやりたくてもできない子が生じるケースが出てくるかもしれません。一極集中になり、地域性が薄れる恐れもあります。チームを増やすだけでは、本当の部員増加や地域移行にはつながらないと考えています」と川名さん。

 部活動地域移行の議論の根底には指導者の思いがある。野球離れ食い止めのためにも重要な中学軟式野球。2025年度に向け、各地域で改めて子どもたちのための最適解を探る時期が来たのではないだろうか。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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