栗山英樹氏の意外な本音「星野仙一さんに憧れていた」 あえて“実践”しなかったワケ
Full-Count / 2025年1月16日 8時20分
■人当たりが柔らかく、部下を立てる「このチームは“ダルビッシュ・ジャパン”」
2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で監督として野球日本代表「侍ジャパン」を優勝に導いた栗山英樹氏(日本ハムCBO=チーフ・ベースボール・オフィサー)が15日、東京のジュンク堂書店池袋本店で出版記念トーク&サイン会を開いた。WBC以降、“理想の上司”に挙げられることも多い栗山氏だが、自身の「憧れの監督」として意外な名前を口にした。
イベント終了後の記者会見。栗山氏は「本当は、僕は星野仙一さんに憧れていました。愛情があって、心の底から叱れるところが好きでした」と打ち明けた。
栗山氏は侍ジャパン監督就任前、2012年から21年まで10年間も日本ハムの監督を務め、リーグ優勝2回、日本一1回。現ドジャース・大谷翔平投手のプロ入りからメジャー移籍まで(2013~17年)を見守り続け、成長を促した。人当たりが柔らかく、コミュニケーションを密に取り、部下(選手)を立てるイメージが強い。何しろWBC期間中に、指揮官の自身を差し置いて「このチームは、ある意味で“ダルビッシュ・ジャパン”」と評したことがあるほどだ。こういうところが、今どきの若い世代からも支持される理由と見られる。
一方、星野氏は2018年に亡くなったが、現役時代は闘志を全面に出すピッチングスタイルで中日のエースの座に君臨し、引退後は中日、阪神、楽天の監督を歴任。2008年の北京五輪では野球日本代表の指揮も執った。監督としては選手に深い愛情を注ぎつつ、自身のカリスマ性でぐいぐい引っ張り、時には“鉄拳制裁”ありのスパルタ方式で「闘将」の異名を取った。栗山氏とは対照的なタイプと言えるだろう。
ただ、栗山氏自身も当初から、“星野流”のやり方は自分には合わないと自覚していたという。「能力も(現役時代の)実績もない僕が、選手たちに言うことを聞いてもらうために何をしなければならないかを考えた中で、僕のやり方は1つしか生まれませんでした。僕は僕のやり方を通しただけ。僕にはあのやり方しかできなかった」と吐露した。
■「それぞれの指導者が、自分らしい指導者にならなければいけない」
確かに、栗山氏は現役時代にヤクルトで7年間、俊足・好打・堅守の外野手として活躍し、通算494試合、7本塁打67打点23盗塁、打率.279をマークしたが、まばゆいスポットライトを浴びたスターというわけではなかった。
「ですから、今の時代の指導者はこうあるべきなどと言うつもりは全くないです。それぞれの指導者が、その人の特長を生かして、自分らしい指導者にならなければいけないと思っています。誰かのまねをしても決してうまくいかない。みんな、自分のやり方を見つけましょうよ、と思っているだけです」と、穏やかな笑みを浮かべながら語った。
栗山氏は現在、日本ハムでフロントと現場を統括する立場にある。新庄剛志監督が指揮を執る現場は、2年連続最下位の後、手塩にかけた若手が開花し昨年2位に躍進した。栗山氏は「本当にいろいろな形で、若い選手の才能を輝かせてくれている。本当に頑張ってくれているので、今年はぜひ優勝させたい、と言ったら偉そうになりますが、監督に喜んでもらえる形をみんなでつくっていかなくてはいけないと思っています」と“新庄流”を称賛し、バックアップを誓った。
栗山氏は昨年、9月に「監督の財産」(日本ビジネスプレス発行、2500円+税)、10月に「栗山英樹の思考」(ぴあ株式会社発行、1500円+税)を出版。この日は2冊の著書の出版を記念するイベントだった。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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